――でも、コンビニやスーパー、パン屋さんだって、売り切れる量だけを用意すればいいんじゃないですか? 余ることがわかっているんだから。
井出:そこには構造的な問題がいくつもあって。まず、ひとつには食品業界では
欠品をしてはいけない、足りないのは悪、という考え方があるんです。
欠品になって棚が空いてしまうと、メーカーはお店側から「もう、おたくとは取引しませんよ」と言われてしまう。そうなったら、商売ができなくなりますから、メーカーは商品が足りなくなるより余らせて捨てることを選ばざるを得ないんです。
――メーカーもつらいんですね。
井出:余れば廃棄コストがかかって経営コストが圧迫されるし、欠品を出してしまうとコンビニやスーパーなどに商品を置いてもらえなくなる。メーカーにしてみたら、どちらもつらいんです。商品を作るメーカーよりも、販売をするスーパーやコンビニなど小売側が圧倒的に強い、そういう上下関係が根本にあるんですよね。
廃棄されたパン(画像はイメージです)
――夕方、お店の棚に商品がなくなっても当然だと思うのですが。
井出:あるデパ地下のパン屋さんから、「
デパート側から、閉店間際でも全種類のパンを残しておくよう指示があり、廃棄が出て困っている」という相談を受けたことがあります。それだけでなく、「値下げ販売は、百貨店の高級イメージを損なうからダメだ」と。もう、どうにもならないですよね。
もし、パン屋さんが「売り切れる分だけを作ります」「閉店30分前には安売りします」と言えば、デパートから「別のパン屋を入れるからいいよ」と言われておしまいです。
――どうして、そんなに商品が揃っていることにこだわるんでしょう?
井出:小売サイドに取材をすると「欠品はお客様にご迷惑をおかけするから」といった言い方をしますね。ただ、本音は売り逃したくないから、他のお店にお客さんを取られたくないからではないでしょうか。