コンビニは値下げ販売より捨てるほうが「本部がトクする」
――客の側からすると、賞味期限が近いものは値下げして「見切り販売」してくれたほうがありがたいんですが。
井出:値下げをすることを業界用語で「売価変更」――売変(バイヘン)と言いますが、スーパーでは売変して売り切るところは多いですよね。百貨店はお店によって対応はさまざまです。
コンビニでは見切り販売をしない店が99%。調理パンやお弁当、生のスイーツを値引き販売しているところは1%くらいでしょうか。

コンビニ(画像はイメージです)
――コンビニこそ、見切り販売をすればいいのに、と思います。
井出:コンビニには独自のシステムがあって、見切り販売をするよりも、廃棄をしたほうが本部のマージンが多くなるようにできているんです。
コンビニ本部が各店に見切り販売を禁じるのは法律違反、という判決が2009年に出ました。で、本部としてはあくまで「禁止はしていない」という姿勢を見せるのですが、実際は、一部の企業で、あの手この手で各店にやらせないようにしている事例があります。
――ひどい話だ。5月17日、セブン-イレブン・ジャパンとローソンが、消費期限が近い食品を買った顧客に、5%のポイント還元すると発表したことで、少しはロスが減るでしょうか?
井出:小さな一歩だとは思います。ただ、わずか5%ですし、ポイントカードを持ってる人しか関係ない。それより見切り販売を推進したほうが効果があるでしょう。もっと根本的には、欠品(棚が空になること)を許容して、作りすぎない・売りすぎない・買いすぎない仕組みにしなければ、食品ロスはいつまで経ってもなくなりません。
― 食べ物を捨てすぎる私たち vol.1 ―
【井出留美さんプロフィール】

博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグ等に勤務。3.11食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託された。著書に『賞味期限のウソ』(幻冬舎新書)、
Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞
<文/鈴木靖子>