Lifestyle

スーパーの食品は手前から取る?食べ物を捨てないためにできること

④食品をムダにしない企業を選ぶ

――食品ロスに前向きに取り組んでいるお店やメーカーを選ぶのも、プラスになるのではないでしょうか。 井出:そうですね。例えば、北海道を中心とした『セイコーマート』は、早くから見切り商品の安売りなどをしているし、昨年、北海道地震が起こったときの対応は見事でした。車のバッテリーから電気をつないで早々に営業をスタートさせ、カツ丼にする予定のご飯を塩むすびに変えて販売した。カツ丼だと一人しか食べられないけど、塩むすびだと2人分以上になりますから。
セイコーマート

セイコーマートHP

――柔軟ですね。 井出:その一方で、被災地近くの某コンビニチェーンの場合、お弁当を捨てていたんです。理由は、幕の内弁当の食材はあるのに漬物がなく、本部の指示する規格が守れないから、商品として出せなかったと。  被災者のみなさんは食べる物がなくて大変な思いをしているのに…と、お弁当納入業者の社長さんが泣きながら取材を受けていました。 ――そのほか、注目の小売店はありますか? 井出:福岡県柳川の「スーパーまるまつ」は、社長さんが自分で美味しいと思うものをお客様に売るという商売の基本を大切にしていて、欠品を許容しているんです。海がシケていたら魚は取れないんだから、売り場を埋めるために鮮度の落ちた魚は置かない。そう言われたら、その通り!だと思いますよね。  その他、コストのかかる折り込みチラシをやめてポイントで還元し、ある金額以上を買ったお客さんには家まで車で送るといったサービスもしています。市内に競合他社も多いなか、シェア15~20%あるそうで、そう思うと、「欠品NG」って、一体誰のためのものなんだろうって思いますよね。 ――少なくとも、お客様のため、だけではないですよね。 井出:お客様のためと言っているけれど、本部が自社の売り上げを失いたくないためだけの言い訳だと思っちゃいますよね。  あと、メーカーでいうと、キユーピーは食品ロス削減に力を入れています。賞味期限を長くするよう製法を新開発したり、マヨネーズが最後まで使い切れる容器を開発したり。フードバンク活動への協力も積極的です。  そのほか、飲食店では廃棄が出やすい「回転」をやめて、注文を受けて作る「回らない回転すし」屋さんもあります。

⑤「もったいない」を思い出す

――私たち消費者も、それこそ恵方巻きブームに飛びつくとか、買いすぎるとか、ロスにつながる行動がたくさんありますね。 井出:スーパーなどの小売で働く方にとって「お客様は神様」で、お客様が求めてもいない気を使い、メーカーと小売のヒエラルキー(上下関係)の中で、たくさんのロスが生まれている。  一方で、その“お客様”が権利ばかり主張しすぎな気がするんです。お客様――消費者には権利だけでなく責任もある。ちゃんと環境のことを考える責務があるんです。 ― 食べ物を捨てすぎる私たち vol.3 ― 【井出留美さんプロフィール】 井出留美さん 博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊、日本ケロッグ等に勤務。3.11食料支援で食料廃棄に憤りを覚え、(株)office3.11設立。日本初のフードバンクの広報を委託された。著書に『賞味期限のウソ』(幻冬舎新書)、Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018受賞 <文/鈴木靖子>
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