誰かのマネをしていると一生「おしゃれ」になれない理由
【モードをリアルに着る! Vol.85/小林直子】
独自のスタイルのことをオウンスタイルと言います。日本では単に「スタイル」「スタイルがある」などと言ったりもします。
ファッションの世界では、この「独自のスタイル」があることはとても重要です。
「独自のスタイル」とはどういうことを指すのでしょうか。
それはとりもなおさず、ほかの誰にも似ていない、その人だけのスタイル、すなわち流儀があるということです。
ほかの誰にも似ていない独自のスタイルがあるということは、ファッションの世界では最高のものとして評価されます。たとえそれがどんなに理解不能な、不格好(ぶかっこう)に見えるものであっても、誰かにそっくりであることや誰かの真似をすることよりは数倍マシなのです。
ファッションの、特にハイブランドが取り扱うような世界では、独自のスタイルがあるというのは絶対の条件です。もしどこかほかで似たようなものを発表したとしたら、それは少し軽蔑の対象となりますし、全く同じであったなら、場合によっては取り下げられます。
けれども、皆さんもご存じのように、より下のレベルのアパレル業界では、デザインの盗用は日常茶飯事です。恥ずかしげもなく同じ素材、同じデザインのものが売られていることはよくあります。
本当はオリジナルのデザインを発表したブランドなりメーカーが一つずつ訴えていけばいいのですけれども、商品のサイクルが短いこと、それに反して裁判には費用も時間もかかること等の問題があり、コピー商品はそのまま野放しになっているのが現状です。
それでもなお、独自のスタイルがあることには価値があります。そしてそれを続ける意志と勇気は称賛されるのです。
セリーヌはフィービー・ファイロの後任のクリエイティブ・ディレクターにエディ・スリマンを採用しました。そしてエディが手掛けた始めてのセリーヌのコレクションが2019年春夏コレクションとなります。
ファッションの世界では、独自のスタイルは絶対条件
黒と白のロック・スタイルを貫くエディ・スリマン
エディ・スリマンはディオール・オムを担当で人気に火がつき、2012年、イヴ・サンローランに移りメンズ、ウィメンズを発表。人気を不動のものとしました。 そのスタイルは黒と白を基調としたロック・スタイル。黒い革ジャンにスリムパンツやミニスカート、シルバーのアクセサリー等、ロック・テイスト満載のそのスタイルは、まさにエディ・スリマン独自のものとして多くのファンを獲得しました。 そんなエディがセリーヌに移ってどんなコレクションを見せるのか、非常に注目されたこのコレクション、結果は、よく言えば「エディ・スリマンのいつものスタイル」、悪く言えば「サンローランのときと同じ」でした。 さて、メゾンをかわっても自分のスタイルを貫くエディ・スリマン。その評価はどうなったのでしょうか。 コレクション発表直後はあまりの変化のなさにざわついていたファッション業界でしたが、最終的には「エディ・スリマンはいつもエディ・スリマンだから素晴らしい!」ということに落ち着きました。 今回、これを読んでいる皆さんに学んでほしいのは、「独自のスタイル」を持ち続ける、その精神についてです。
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