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ビートたけし、なぜ今さら離婚?家庭を持っても諦められない男たち

“秘密基地”が欲しい男たち

少年秘密基地子供

写真はイメージです(以下同じ)

 R子さんの抗議はもっともだが、男性である筆者にはT夫さんの気持ちもよくわかる。T夫さんにとって書斎は、それがどんなに狭いスペースであろうとも、必要だった。なぜならT夫さんは、否、中年を過ぎた男性の一定数は、人生において “秘密基地”を必要とするからだ。 “秘密基地”とは、要は社会的責任や“大人っぽいふるまい”から自分を解放できる場所のことである。少々安っぽい言い方をするなら、「しがらみとは無縁の自由」を手に入れられる場所、とでも言うべきか。 「結婚して家庭を持っているのに、いつまで“秘密基地”なんて欲しがってんの?」と呆(あき)れる女性陣の意見は、ごもっとも。世の多くの女性はR子さんのように現実を直視し、生活環境やライフステージの変化に適応すべく、自分自身を欲求ごと作り変えるからだ。子供の頃の夢や希望には、ちゃんと折り合いをつけて大人になる。  しかし多くの男性は、結婚しようが家庭を持とうが、心の底では「なるべくなら変わりたくない」と思っている。できれば独身時代と同じように、趣味の本やマンガやフィギュアやDVDやCDやビンテージスニーカーを買いたいし、ジャンクフードを死ぬほど食べたいし、高校時代の親友と朝まで飲みたい。いつかはスポーツカーを乗り回したいし、一人で放浪の旅にも出たい。いくら子供っぽいと妻になじられようが、それが彼にとってあるべき「ほんとうの自分」だからだ。

社会的責任が重ければ重いほど

趣味、ホビー、スポーツ けれども多くの男性は、家庭を持ちながらは「ほんとうの自分」になれない。それを叶えるには莫大な財力と、人智を超えた妻の理解が必要だからだ。  結果、「そこに身を置いている間だけは、一時的ではあれ“ほんとうの自分”でいられる場所」、つまり“秘密基地”を求めるようになる。それは、ある男性にとっては「書斎」、ある男性にとっては「納戸に設置したフィギュアのショーケース」、ある男性にとっては「行きつけの隠れ家的飲み屋」、ある男性にとっては「団地内駐車場に停めた自分のクルマの中」となる。最後の人は、週末の夜にマンガとタバコと発泡酒を携えて、1、2時間ほど軽自動車の車中で過ごすそうだ。  男は歳を取り、さまざまな社会的責任が肩にのしかかればのしかかるほど、それを抑圧と感じれば感じるほど、それらとは無縁の聖域たる“秘密基地”が欲しい、という想いを強めてゆく。T夫さんも例外ではなかった。  2LDKの賃貸に書斎がなくてもT夫さんが平気だったのは、「引っ越しによっていつかは書斎が持てるかもしれない」可能性が、まだ残っていたからだ。しかしローンを組んで購入するマンションは、基本的には一生モノ。子供ができるとなれば、なおさらだ。容易に引っ越しや売却はできない。  つまり、このタイミングで書斎を手に入れなければ、「ほんとうの自分」でいられる場所が一生確保できないとT夫さんは考えた。だから必死になったのだ。
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最後に「ほんとうの自分」になりたい?
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