ケフィを家に連れ帰った後、ブラッシングをし、体中をきれいに拭きました。いったい何千回、何万回、こうしてブラッシングをしたかわかりません。でも、これが最後のブラッシングです。
以前はふさふさだった黄金色の被毛は、抗ガン剤の影響もあってここ1年ほどですっかり薄くなってしまいました。リンパ腫のせいであちこちにハゲはできたし、老犬性のおできもたくさんできました。パンパースグラスのように立派だったしっぽの毛も抜け落ち、芯が透けて見えるほどみすぼらしくなりました。
どれもこれもケフィができるかぎりの力を振り絞って、それだけ長い間、私のそばにいてくれた証拠です。
「こんな体になるまで、ずっーとがんばってくれて、ありがとう。ケフィ」
1月6日の午後、1年ちょっと前にケフィと一緒に相棒猫・でんすけを見送った霊園で、ケフィは荼毘(だび)に付されました。
顔の周りにはたくさんのお花を飾りました。お腹を空かせることがないように大好きなおやつやドッグフードを持たせ、寂しくないようにお気に入りのぬいぐるみも入れました。ひとりでも退屈しないよう、ひとり遊びに使っていた「キュッキュッ」と鳴るおもちゃも入れたし、テニスボールも入れました。一緒にテニスコートを走り回ったときを思い出してもらえるように……。
宮古島のビーチで
虹の橋までの道中、雨が降っても大丈夫なようにレインコートと寒さよけのブランケットをかけ、いちばん上にケフィが好きだった宮古島のビーチの写真を乗せました。海で「持ってこい」をしたときのボールと一緒に。
公園で使っていたボールと一番のお気に入りのぬいぐるみは、どうするかさんざん迷いましたが、形見として置いて逝ってもらうことにしました。残された者がケフィを偲ぶために。
満足そうに眠るケフィの笑顔を見つめながら、私の大好きな耳の上のつんつんとした毛をひっぱり、耳の下の飾り毛を整えました。死に水を取り、頭と顔を撫でました。
これが形のあるケフィに触る最後の機会です。
そしてすっかり冷たくなったおでこにキスをし、お別れを告げました。
「ケフィがいたからこそ私の人生はあんなにも輝いた。ケフィに出会えたからこそ、あんなにも楽しい毎日があった。16年間、本当に本当にありがとう!」
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<文/木附千晶>
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