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2度の流産やPTSDで苦しんだ…眼帯の女性戦場記者が暗殺されるまで

真実を伝えるために難民を起用した

――これまでドキュメンタリーを作ってきた監督ですが、本作でフィクションという形をとったのはどうしてですか?
(右)マシュー・ハイネマン監督

(右)マシュー・ハイネマン監督

ハイネマン監督「メリーについてヴァニティ・フェア誌のマリエ・ブレンナーが書いた記事を読んで、メリーの物語を映画化したいと思いましたが、ドキュメンタリーを撮るときのプロセスはほとんど、この作品にも生かされています。例えば、私は一般の人々を撮るのが好きで、今回はヨルダンで撮影したのですが、エキストラはほぼ全員あの地域の難民です。  映画のイラクのシーンで泣き叫ぶ女性たちがいますよね? 彼女たちは本当にイラク人難民で、自分たちの体験を語り、本物の涙を流しているんです」

悲しみで撮影を中断してしまった主演女優

――なぜ、エキストラに本当の難民や一般人を起用したのですか? ハイネマン監督「真実を伝えたかったからです。観客にとっても出演者にとっても真実を伝えるには、実際に悲劇を体験した人たちではないと伝えられないと思ったから。  彼らを探して取材し、彼らの体験や人柄を知り、カメラの前で彼らが自分たちの物語を語れるようになるまで何カ月も費やしました。病院のシーンで、死んでしまった2歳の男の子を肩にかついで「アラーよ、なぜ、なぜなんだ!」と泣き叫ぶ男性いますが、彼も自分自身の体験を再現しているんです
(左)ロザムンド・パイク、(右)マシュー・ハイネマン監督

(左)ロザムンド・パイク、(右)マシュー・ハイネマン監督

――そのシーンでは、主演女優のロザムンド・パイクが撮影をいったん中断してしまったと聞きました。 ハイネマン監督「ロザムンドは彼らに苦しみを再現させることに罪悪感を感じたんです。『私たちのやっていることは本当に正しいことなの?! 私たちこんなことをやっていいの?!』とね。そして、撮影をいったん中断して、ロザムンドと話し合いました。 『彼らは無理矢理ここに連れて来られたんじゃない。彼らは自分たちの声を聞いてほしいと思っているから、ここにいるんだ。彼らの話を伝えるのが私たちの役目じゃないかな』。そうしたらロザムンドも分かってくれたんですが、ドキュメンタリーを作るときも同じで、自分の物語を語りたい人たちだけを登場させるというのが私の原則です」
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戦場ジャーナリストの「自己責任」なんて考えたこともない
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