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Vol.14-2 “地獄のような離婚”で知った、夫婦が「向き合いすぎない」ことの効用

「ずっとテーブルで見つめ合っていたい」

「外で彼女と食事中、僕が彼女のキャリアについて差し出がましいことを言い過ぎてしまい、彼女が怒って帰っちゃったことがあるんですよ。2日後に彼女から封書の手紙が届きました。そこには、ついカッとなってしまったことに対する謝罪と、でも私の言い分もわかってほしいということ、これから二人がどうなっていきたいかが、丁寧に綴ってあったんです」  と言って土岡さんは、父親のメールを暗唱したのと同じような正確さで――淀みなく完璧に――手紙のあるフレーズを暗唱した。その大意はこうだ。「2人が歳を重ねても、縁側に並んで外を見ながらお茶をすするなんて嫌だ。ずっとテーブルで見つめ合っていたい」。元妻の理想とする夫婦観が込められていた。 写真はイメージです おそらく土岡さんは結婚する前からわかっていた。両親が横並びに座っていた「ソファー」と元妻が避けたいと主張した「縁側」が、実は同じものであることを。彼はその2つをまとめて「カウンター」と言い換えたのだ。 「テーブルとカウンター、どちらが正しかったんでしょうね。いや、正しいとかじゃないのかな。会話なくソファーでテレビを観ていた僕の両親は離婚せず、元妻とテーブル上で逃げ場のない真正面のどつきあいをした僕は離婚した。ただ、そういう事実があるだけです」 <文/稲田豊史 イラスト/大橋裕之 取材協力/バツイチ会>
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga
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