紅白で乱発される特別枠はいつから?歴代サプライズを振り返る
『第70回紅白歌合戦』の特別枠で、竹内まりや(64)の出場が決まりました。竹内まりやはデビュー40周年の記念イヤー。他にも、紅白に出たことがない「スピッツ」や、ヒット曲連発の米津玄師(28)に交渉中なのではないか、との噂が飛び交っています。
本当の意味でサプライズだったのが2009年。放送当日まで極秘にされていたので本当にびっくりでしたよね。軽く笑みを浮かべながらステージへ向かう永ちゃんの姿は、強烈な印象を残しました。2012年にも再び特別枠で登場した永ちゃん。今度は、80歳のアニバーサリーイヤーに「ファンキー・モンキー・ベイビー」でお願いします!
(※2014年と2018年はサザンオールスターズ)
特別枠出場回数で永ちゃん超えを果たしたのが、桑田佳祐でした。4回ともなれば、もうレギュラー出演でよいのでは…。それはともかく、最初の2010年ではガンの闘病を経て復活を印象付ける力強い歌声を披露してくれました。
「勝手にシンドバッド」で松任谷由実(65)との濃厚な絡みで楽しませてくれた2018年は記憶に新しいところ。後世の語り草になることでしょう。
2008年エンヤ(58)
2009年スーザン・ボイル(58)
2011年レディー・ガガ(33)
2018年サラ・ブライトマン(59)
海外アーティストのパフォーマンスも印象的な特別枠。特に、東日本大震災のあった2011年に登場したレディー・ガガは、日本を勇気づけてくれました。
10年前のスーザン・ボイルは懐かしい名前ですね。イギリスのオーディション番組で一躍スターになったことで、紅白にまで出てしまいました。最近ではヘアスタイルを変え、メイクもばっちりでイメチェンを果たしたそうです。
1979年特別出演:美空ひばり、藤山一郎(1911-1993)
1990年白組:長渕剛(63)、ポール・サイモン(78)
紅組:シンディ・ローパー(66)
1994年白組:吉田拓郎(73)
ここまでは、NHKが公式に特別枠として発表したアーティストを見てきましたが、実はその前から“特別枠”的な扱いがあったのです。原型とも言えるのが、1979年の美空ひばりと藤山一郎。30回の記念大会に、特別出演で華を添えました。“ザ・紅白”って感じの風格ですよね。
にぎやかさで群を抜いていたのが1990年。ベルリンの壁から20分近く歌い、演歌の大御所を激怒させたと言われる伝説の長渕剛。アメリカからは、ポール・サイモンとシンディ・ローパーが白組、紅組の一員として登場しました。時はバブル崩壊の前年。まだ日本にもギリギリお金があったんですね。
音楽の面では、1994年の吉田拓郎が圧巻でした。トランペットの日野皓正(77)やピアノの大西順子(52)など、各ジャンルの凄腕を集めた特別バンドは、吉田拓郎の出演条件だったそう。
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他にも、「PPAP」で一世を風靡した2016年のピコ太郎(46)や、引退宣言が社会現象にもなった2017年の安室奈美恵(42)など、様々な名場面を生み出してきた特別枠。紅と白に振り分けられた普通のアーティストの気持ちもおもんばかりつつ、楽しみたいものです。
<文/音楽批評・石黒隆之>
このように数々の目玉が登場してきた“特別枠”。NHKが正式に設定を発表したのは、2007年の第58回からなのだそう。このときは、小椋佳(75)が美空ひばり(1937-1989)の映像に合わせて「愛燦燦」をデュエットしました。(年齢は現在、以下同)
これ以降、サプライズが恒例になったわけですが、昨今のように特別枠が乱発されるのにはいくつかの背景がありそうです。
まず、大物ミュージシャンを口説き落とすための“特別感”。他の出演者とはランクが違うことを形で示せば、自尊心をくすぐれるといった狙いもあったのかもしれません。
もうひとつは、放送当日までに第1弾、第2弾と注目度を上げていくイベント感でしょうか。洋服のセールみたいなものですよね。視聴者の興味をつないでおくための苦肉の策と言ったら怒られるでしょうか。
というわけで、どことなくやっつけ感漂う特別枠のヒストリーをいくつか振り返りましょう。
①矢沢永吉(70)2009年、2012年
②桑田佳祐(63)2010年、2014年、2017年、2018年
③海外の大物アーティストたち
④特別枠よりもスペシャルな人たち
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4