「明らかに、サークルの子たちの顔が引きつってたんですよ。彼のことを見て『お疲れ様です~』とは言うんですけど、ぜんぜん話しかけにも来ないし。でも彼の方は凄くなれなれしく『
最近どーなのよ』みたいな声掛けをしてました」

しかし会話は全く盛り上がらず、サークルメンバーは「
あ~そうですね~」「
まあ、仲良くやってます~」と他人行儀な返事をするのみ。さすがに不審に思った千紘さんは、顔見知りの同級生を見つけるとこっそり彼についてを聞き出すことに成功しました。すると……
「聞いてビックリですよ。
彼、毎年のように文化祭に現れては女の子を物色したり先輩風を吹かせたりしてたらしくて……。はっきり言って嫌われ者のイヤなOBとして有名な人だったんです!」
気が付くと彼と千紘さんを遠巻きに見ていたサークルメンバーたちは「
うわ、あいつまた来たよ……」「
女連れだし、今年はしつこく飲み会まで居座らないといいね」などとヒソヒソ話をしていました。背筋が寒くなった千紘さんは、用事があると言ってその場をすぐに立ち去り、彼との連絡もそれっきり絶ったそうです。
「共通の話題があったり知人がいても、すぐに相手を信用するのはやめようという良い教訓になりましたね。ちゃんと周りからの評判を知っておかないと痛い目見るなぁって」
千紘さんはその後、同級生から嫌われていないサークルOBを紹介してもらい、人生初のお付き合いをスタートさせたそうです。
―シリーズ「
秋冬のトホホ」―
<文/もちづき千代子>
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もちづき千代子
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。インコと白子と酎ハイをこよなく愛している。Twitter:
@kyan__tama