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「アナ雪2」の主題歌が難しい…合唱できたレリゴーとの違い

一瞬のうちに起きる鋭い転調

 次は、一瞬のうちに行われる鋭い転調です。歌いだしからの短調が、楽曲の主題である<未知の旅へ>で長調へと変わるのですが、これがあからさまに違うキーに移行したり、いくつかの和音をやりくりさせたりするのではなく、Eフラットという同じ主調で行われていることも楽曲を引き締めているように感じます。  これは、かつてのアメリカの大作曲家、コール・ポーター(1891-1964 代表曲に「Night And Day」、「You’re The Top」など)が得意にしていた手法で、「I Love Paris」や「Love For Sale」などの曲で聴くことができます。 「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」とコール・ポーターに共通しているのは、いかにもこれから転調しますよといったクドさがない点です。裏を返せば、聴き手に場面が変わるヒントを与えていないとも言える。  だからこそ、歌手の楽曲への理解度が問われるのですね。なぜなら、短調から長調へと変わる根拠を、詞や歌い方のニュアンスを総動員して示さなければならないからです。だから、ただ<未知の旅へ>の最高音が出るとか、その程度のことでは太刀打ちできないような作りになっている。ここも「レット・イット・ゴー~ありのままで~」にはなかった要素でしょう。  主題歌の社会現象化という想定外の事態で大ヒットした前作から5年。柳の下の2匹目のドジョウを狙いたくなるところ、それを毅然と突っぱねた「イントゥ・ジ・アンノウン~心のままに」の完成度に、ディズニーのプライドを見た思いです。 <文/音楽批評・石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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