“大人のいじめ”スイッチが入る職場の特徴。良い人でも加害者に…
2019年10月に神戸の小学校で発覚した教員同士のいじめは、その手口の残虐性に注目が集まった。また、韓国では元KARAク・ハラの自殺の原因がネットいじめとも噂され、“大人のイジメ”は今、改めて大きな社会問題となっている。このシリーズではさまざまなシーンで起こる大人のいじめの実態に迫ってきた。
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そもそも人間はなぜ大人になってもいじめをするのか。社会学の視点で解説してくれたのが、いじめ発生のメカニズムを解明した社会学者の内藤朝雄氏だ。
「食欲や性欲、睡眠欲のようにどんな場合も無条件に起きる本能とは違い、いじめはある条件のもとでのみスイッチが入るように、人間が進化の過程で身につけてきた、先天的かつ条件的なレパートリーなのです」
では、その“ある条件”とは何か。内藤氏は、「迫害可能性密度」(他者を迫害できる/他者から迫害されるかもしれないと感じるチャンスが生活環境にちらばっている度合い)が高まったときに、人はいじめのスイッチが入ると語る。
現代社会では、学校や会社のように簡単には抜けられない集団の中で、仲間内のノリや独自のルールが支配しているとき、人は他者を苦しめて楽しむスイッチが入りがちだという。
「社会学者の宮台真司氏も語っている通り、私たちは不全感(漠然とした不安や欠損感)を感じているとき、他者の人格を支配し、コントロールすることで偽りの全能感(自分が力に満ちているという錯覚)を得ようとしがちです。
他者を支配できるチャンスが多い場所では、誰もがいじめ加害者になる可能性がありますし、そのチャンスがない場所にいるときは、たまたま善良な人間でいられるというだけなのです」
また、いじめが起きやすい会社にはいくつかタイプがあるという。
「ひとつは、いい商品やサービスを市場に提供して高い収益を上げることよりも、派閥の力を大きくしたり、権力の縄張りを広げたりすることが目標になってしまっているような会社です。
ぬるま湯に浸かってダラダラしている社内の勢力が、企業に利益をもたらすはずの優秀な社員をいじめて追い出すようなこともあります」
そしてもうひとつが、いわゆる洗脳教育まがいの新人研修を行うようなブラック企業だ。
「労働者をポエムのような言葉で洗脳し、ボロボロになるまで使いつぶして荒稼ぎする会社は危険です。社員を奴隷のように支配することが収益につながる“悪魔の合理性”が働き、いじめが際限なくエスカレートするからです」
他にも、教師や医師・看護師など、人を教育したりケアしたりする職業は、他者をコントロールする全能感を抱きやすいので注意が必要だという。
また、内藤氏はいじめを行為の種類によって「暴力系(殴る、立たせる、服を脱がせるなど)」と、「コミュニケーション操作系(無視、陰口、誹謗中傷など)」に分類。いじめの形態によっても「排除型(集団から仲間外れにする)」と、「飼育型(集団の中に囲い込む)」に分類している。
「コミュニケーション操作系」ほど法的には訴えづらく、また「飼育型」ほど外からは一見仲良しグループのふざけ合いに見えるので、厄介ないじめと言えるだろう。
このように、いじめは実にさまざまな構造を持っているのである。
大人のいじめ、スイッチが入りやすい職場の条件
洗脳まがいの研修を行うような企業
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