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発達障害の私が20代で「子どもを作らない」と決めた理由

「今までの自分の人生を振り返り、子どもは作らないと決めました。」
女性

写真はイメージです(以下同じ)

――強い意志を持ちながら頭の中に描いている人生設計を語ってくれた唯さんは、現在22歳の未婚女性。20代前半という比較的早い時期に「子どもを持たない」という結論を自らに下した裏には、一体どんな理由や想いがあったのでしょうか。

「周囲の人と何か違う」と思っていたら…

 現在、サービス業に従事している唯さんは礼儀正しく、物腰が柔らかな女性です。20代前半で既に周囲から「結婚して子どもを作らないと……」と言われることに生きづらさを感じつつも、子どもがいない人生を歩むことへの葛藤は、ほとんどないと言います。  なぜ、未婚のうちから子どもを持たない生き方を選ぼうと決心したのか。その背景には、唯さんが持つ“ある障害”が大きく関係していました。「実は私、発達障害。注意欠如多動性障害です。」 「注意欠如多動性障害(ADHD)」とは、「不注意」と「多動性」「衝動性」を主な特徴とする発達障害の一種。以前は「注意欠陥」と表記されていましたが、2014年より「注意欠如」に改められました。自分をコントロールできない、落ち着きがない、物事に集中できる時間が短い、忘れ物が多いといった特性があることから、誤解されてしまうことも多い障害です。

「発達障害は遺伝することもあると聞いたから」

発達障害 ADHD 実は唯さん、物心ついた頃から「周囲の人とは何か違う」と違和感を覚えていたそう。しかし、自身が発達障害であることを知れたのは、専門学校在学中だったそう。当時、心を病んでしまって通院することになったので、その時に自分の違和感を伝え、診断をしてもらったところ「発達障害」と告げられ、ずっと抱えていた違和感が消えた瞬間でした。  そして、この時から唯さんの中では「私は子どもを作らない」という決意が固まっていったよう。「発達障害は遺伝することもあると聞きました(※)。母方の家系には精神に問題を抱えた人が多かったとも聞いているので、私は子どもを作らないと決めました。」  誰かと良い縁があれば結婚はしたい。でも、子どもを作らないことが条件。そんなマイルールを唯さんは胸の中にこっそり定めています。

障害を持つ自分と上手く付き合っていきたい

 最近では芸能人が発達障害であることをカミングアウトすることも増えてきており、障害への理解が広まりつつあります。しかし、本当に大切なのは、この風潮を一過性のブームにしないこと。そのためには、当事者が実際にどんな不自由さを感じているのか、何に苦しんでいるのかを知る必要があります。 サービス業の女性。カフェの店員 例えば、唯さんは「忘れ物が多い」「意思疎通が上手くできない」「言葉の意味が上手く理解できない」といった特性を自覚しているよう。そして、気付けた特性には自分なりに対策を行っています。 「昔から他の人と自分はどこか違うと思っていたので、周りの空気に合わせられるよう、努力してきました。出来ないこともあるけど、なるべく出来るようになれたらと思い、努力しています。中にはどうしてもうまくいかないこともあるので、そんな時はどうしたら出来るようになるのか考え、何度も工夫します。何回やっても出来ないことは出来るようになるまでにすごく時間がかかるので、折れない心も必要になりますね。」  人一倍努力をしながら、障害を持つ自分と上手く付き合っていこうと頑張り続ける唯さん。もしかしたら、この先、年齢を重ねるごとに唯さんの耳には周囲からのお節介な言葉が今以上に届いてしまうかもしれません。それでも、今後も結婚や子どもに囚われることなく、彼女らしい歩み方で人生を謳歌していってほしいですね。 ―シリーズ「親としてのエピソード集」― ※参照:メディカルノート「ADHDと遺伝―親がADHDの場合、子どもに遺伝する確率は?」(2017/11/26) 自治医科大学医学部小児科学 神保 恵理子・桃井 真里子「発達障害における遺伝性要因 (先天的素因) について」2015年 <文/古川諭香> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291
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