
未婚であることに葛藤はない。そう話す一方で、和恵さんは子どもに関しての葛藤はあると打ち明けます。
「本能的に欲しい気持ちもあるし、親も孫を見たいだろうなと思うので、申し訳ない気持ちもあります。」
こうした気持ちを抱くからこそ、オーストラリアでは独身女性が無料で精子提供を受けられる制度があることをテレビで知り、心惹かれました。しかし、
片親に対する目がまだまだ厳しい日本の現状を踏まえると、未婚のシングルマザーという道には踏み切れなかったと言います。
諦めきれない我が子への気持ちに折りあいをつけるのは、難しいこと。けれど、和恵さんはこれまでの生き方を後悔していません。それは2年前、突発性の難病を患い、死を覚悟した時に実感したそう。
「
死にかけた時、『○○しておけばよかった』という後悔がなかったんです。」
当時、和恵さんが思ったのは「遺品整理で身内が困らないように重要事項は書き残したい」「今までお世話になった人や大切な友人たちに感謝の言葉を伝えたい」「言葉の伝わらない動物という家族を思いきり撫でて抱きしめたい」の3つ。「これはとてもいい人生を送ってきた証明だと思うんです。」
お節介な詮索を受けると、自分の生き方に自信が持てなくなることもあるもの。けれど、人生は一度きり。誰のものでもなく、自身が楽しむためのものだからこそ、自分が心惹かれる道を選ぶ勇気を持ちたいものです。
<文/古川諭香>
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古川諭香
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:
@yunc24291