東出昌大の会見から考える「妻と不倫相手どっちが好きか」問題の深層
<亀山早苗の恋愛時評>
次々と報道される有名人の結婚離婚。その背景にある心理や世相とは? 夫婦関係を長年取材し『夫の不倫がどうしても許せない女たち』(朝日新聞出版)など著書多数の亀山早苗さんが読み解きます。(以下、亀山さんの寄稿)
不倫騒動の渦中にいる俳優・東出昌大さんが17日、会見をおこなった。その中で「好きなのは唐田さんですか、杏さんですか」というリポーターの質問が話題となっている。
彼は「お相手のあることなので」「今ここでしゃべることは、妻を傷つけることになる」などと答えた。
どちらかを好きだと言うことは、妻か恋人のいずれかを傷つけることになるわけだから、この質問の答えを回避したのは正解だったと思う。
そもそも、「どちらが好きか」は愚問にすぎる。どちらも好きだから不倫になったのではないだろうか。
かつて取材したある独身女性の話だが、彼女は既婚男性と不倫の恋に陥っていた。
妻と自分とを行ったりきたりしている彼に業を煮やして、「奥さんと私、どっちが好きなの」と禁断の質問をしてしまった。そのとき彼は“好き”という言葉は使わず、「大事なのは妻だけど、愛しているのはキミだよ」と答えたのだという。
彼女はそれを聞いて、「なるほどと唸(うな)ってしまった」と苦笑していた。
彼にとって家庭は大事なもの。だが、家庭外で恋に落ちてしまった。
自分を律すればいいと思う人もいるだろうが、「恋」とはまさに「落ちてしまうもの」なのだ。自分を止めることなどできない。情熱の迸(ほとばし)るままに恋に身を任せた。
だが一方で、家庭という「自分が妻と協力して作り上げてきた組織」を壊す気など毛頭ない。それは彼の人生の歴史で重要なものであり、所属する企業と同じように大事な「社会」なのだ。「家庭」はひとつの社会単位である。
恋は「社会」の外にある。個人と個人の感情だけで結びついた関係であって、組織にはなりようがないのだ。
不倫する既婚男性からいえば、「結婚と恋愛は別もの」ということになる。不倫する既婚女性も同じくそう言う。
独身時代の恋愛は結婚へと流れていきやすい。恋愛のゴールは結婚だと多くの人が思い込んでいるからだ。その時点で、「結婚後も絶対に恋愛する」と言いきる人はいないだろう。
ところが結婚してからだって恋に落ちることはあるのだ、実際に。そして結婚を目的としない恋愛は、恋愛そのものとしてときめきが倍増、「いけないことをしている」罪悪感と、バレたら困るリスクがあるためにさらに情熱的になり得る。
一方、東出ケースのように、相手の女性が若い場合、彼女は「大人の恋愛」にどっぷりはまりがちだ。妻より自分を選んでくれているという優越感もあるかもしれない。大人の男への憧憬もあって、彼を見る目はキラキラ輝いている。
そして男にしてみれば、若い女性が目に星を光らせて自分を見上げてくれているのだ。家庭という組織をともに築いている妻とは「同志」に近い感覚はあるだろう。だが、妻はそんなキラキラした目で自分を見てはくれない。
妻は同じ船に乗り、ともにオールを漕(こ)ぐ仲間。夫を崇(あが)めるより足並み揃えて家事や育児に精を出さなければ、船は前に進まないのだ。
男性は、そんな妻をときに尊敬し、ときにうっとうしく思いながらも同調しようとがんばっている。それでも、ときにはキラキラとした瞳に心奪われてしまうのだ。
若い女性と不倫というと、「若い肉体に溺れた」ようなイメージがつきまとう。不倫の関係では確かに「セックス」が重視されるが、それだけで関係は続かない。年単位で関係が続くのは、お互いに心惹かれる「何か」があったからだろう。
「好きなのは唐田さんですか、杏さんですか」答えを避けた東出昌大
「大事なのは妻だけど、愛しているのはキミだよ」は不倫男の本音!?
「家庭」は大事な「社会」なのだ。恋は「社会」の外にある
結婚していても、ときにはキラキラとした瞳に心奪われてしまう
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