K-POPアイドルが日韓の歴史発言をする背景とは?100年前から今まで生み出される悲劇
歴史長編小説『李(すもも)の花は散っても』(朝日新聞出版)は、1916年(大正5年)の夏から物語がはじまる。皇族の長女として何不自由ない暮らしをしていた15歳の方子(まさこ)は、新聞記事を見て自分が婚約したことを知る。しかも相手は、朝鮮の王族。
と書くと、自分たちが生きるのとは遠い世界のことだと思われるだろうか。過ぎ去った歴史上のことだと感じる人もいるだろう。しかし歴史というのは不思議なくらいくり返し、いつ何どき同じことが起きるかわからない。だから、知る意味がある。
著者の深沢潮さんはいう。
【深沢潮さんインタビュー前編を読む】⇒朝鮮王族と結婚した日本の女性皇族。その数奇な運命をたどって見えてくるもの
深沢潮(以下、深沢):K-POPグループのメンバーが歴史に触れる発言をすることがたびたびあります。その内容が植民地時代についてだと、日本ではそれに対してファンから違和感や失望の声があがるのが恒例です。自分が傷つけられた気分になるんでしょうね。
でも、そのメンバーは個人を責めているわけじゃない。受け取る側が「こんな抑圧の歴史があるから、こういう発言になるんだな」と知っていれば、反発は覚えなくなるのではないかと思います。
――方子さんと、“韓国のラストエンペラー”ともいわれる李垠(り・ぎん/イ・ウン)は当時、「日鮮の架け橋」「日鮮融和の象徴」のようにいわれましたが、現実には、日本が韓国を一方的に植民地支配し、日本人から韓国人への苛烈な差別もあったことが本作から伝わってきます。
深沢:方子さんと垠のような人でも、それと無縁ではありませんでしたね。
深沢:婚約が決まったとき、方子さんのクラスメイトは口さがなく噂しましたし、その後も「子どもを産めない体質だから、朝鮮王族の結婚相手に選ばれたらしい」という噂が根強かったそうです。日本にとっては政略として結婚はさせるけど子孫を残すとなると不都合が出てくる……というところから出てきた噂なのでしょうけれど、本人の耳に入ったとき、どれだけ心をえぐられたかと思うと胸が痛みます。いたるところでマイクロアグレッションが行われていました。
――マイクロアグレッションとは、マイノリティに向けた言説のうち、あからさまな差別ではなく、一見悪意がないように聞こえるけど、攻撃的なメッセージが込められているため、受け取る側はネガティブな感情を抱く、というものですね。たとえば「ゲイっておしゃれだよね」というような。
深沢:最近知られるようになってきましたね。じわじわと心を削るものだと思います。
【深沢潮さんインタビュー前編を読む】⇒朝鮮王族と結婚した日本の女性皇族。その数奇な運命をたどって見えてくるもの
と書くと、自分たちが生きるのとは遠い世界のことだと思われるだろうか。過ぎ去った歴史上のことだと感じる人もいるだろう。しかし歴史というのは不思議なくらいくり返し、いつ何どき同じことが起きるかわからない。だから、知る意味がある。
著者の深沢潮さんはいう。
【深沢潮さんインタビュー前編を読む】⇒朝鮮王族と結婚した日本の女性皇族。その数奇な運命をたどって見えてくるもの



