「筋肉に殺されたい」イケメン・トレーナーの正体が判明【シングルマザー、家を買う/25章・後編】

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イケメンのまさかの迷言

 その頃、トレーニング中にちょっとした世間話をするようになったイケメンに、休みの日は何をしているのか聞いてみた。どうせなら、もうちょっと仲良くなりたい。できることなら!  そんな下心を持ちながら、話が弾むような答えを期待していると、自分の筋肉を指さして、こう答えたのだ。 「鍛えてます!」  そうか。そうだよね。だからこの仕事なんだね。天職だね。さっと引いた私に気づかないまま、イケメンはさらに笑顔でこう答えたのだ。 「筋肉を鍛えすぎると、筋肉が必要な脂肪を食いつぶすために、殺されるんですよ。僕、そうやって死ぬのが理想なんですよね!」 シングルマザー、家を買う/25章・後編 え? なにそれ。もはやその先を聞く気が起きない。  その頃から、最初の「イケメン素敵!」という目から、「筋肉バカのイケメンめ」という目に変わった私は、開き直ってガッツリとトレーニングに集中することができた。本当に単純な自分に、愛しさすら覚えてしまった。

無事、ダイエットに成功!

 そして卒業の日。私は見事-9kgの減量に成功したのだ。出産前よりも1kg軽くなった。目標の14kgまではいかなかったけど、十分である。  結果としては筋肉をつけて体重を減らしたので、足もウエストも、だいぶ細くなった。女子プロと言われた二の腕はそんなに変化がなかったのは気のせいなのか……。  とはいえ、会う人会う人に「やせたねー!」と言われ、洋服のサイズもワンサイズ下になった。なにより、埋没していた鎖骨が“発掘”されたのだ。鎖骨さん、ここにあったんだね……。だいぶ埋もれていたね……。  そんな感動とともに、少しの自信がついたのだ。コンプレックスを解決すると、こんなにも気持ちが変わるのだと、あらためて実感することができた出来事だった。  イケメンに対し、うまいこと気持ちが引いた私は、最終日には気持ちよく「ありがとうございました!」と手を振ることができた。  最後にイケメンが言った一言がこれだ。 「もう戻ってこないようにしてくださいね~!」  わかっとるわ!  ……さて、それから2年が経ったわけだが、今は残念ながら4kgのリバウンドをしている。普通にご飯を食べる生活になったのだから、仕方のないことなのかもしれない。それでも、体型はかなり維持できている。これはあのイケメンに教わった筋トレをたまに続けているからだろう。本当にいい経験になった。  ちなみにこのダイエットジム、私が通っているときにすれ違ったスタッフはだいたいイケメンで、女性スタッフはだいたいかわいかった。  理由は言わずもがな、である。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky※このエッセイは毎週水曜日に配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
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