美波はるこ作品のここがいい!②主人公に感情移入しやすい
主人公たちは、ごく普通のOLであることが多い。正直見分けはつきにくいが、読者は彼女たちに自身を投影しながら読むため、性格や見た目が突飛すぎない方がいいのだろう。
適度に美人で適度に仕事ができる女。そんな「絶妙に身近にいそうな理想の女性」が若い男の一言一句にやきもきしたり、大人の余裕を見せようと意地を張る。その姿は親しみやすく、感情移入しやすい。

(C)はるこ(秋田書店)2018
また、会話のテンポが良く、臨場感のあるモノローグで読者をグイグイ引き込んでいくのも、美波はるこ作品の特徴だ。
ちなみに、『酒と恋…』の松子は重度の日本酒オタクであり、恋愛漫画の主人公にはあるまじき表情をしたり(作中でも「顔がヤバイ」と言われている)、かなり個性的だ。

(C)はるこ(秋田書店)2018
作中の年下男子たちは、キュンとするような台詞やしぐさをギュッと凝縮させ、時速200キロ直球ストレートでガンガンぶつけてくる。
それを主人公が読者の身代わりとなって全身全霊で受け止め、はしゃいだり傷ついたりしてくれるからこそ、我々は安心してイケメンとの疑似恋愛を楽しめるのだ。
あんな豪速球を実際に受け止めようとしたら、『アウトレイジビヨンド』の加瀬亮のようになってしまうだろう(わからない方は映画を観てみましょう)。
美波はるこのここがいい! ③いろんな出会いを楽しめる
美波はるこ作品は短編の数がかなり多く、男女の出会いのバリエーションが豊かだ。
「血の繋がらないイケメン兄と2人きりで住むことになったら?」
「道で拾った酔っぱらいが実は人気俳優だったら?」
「一度だけキスしたことある会社の後輩と同じホテルに泊まることになったら…?」
など、誰もが一度は妄想したことのある、ありとあらゆるシチュエーションを楽しませてくれる。もはや胸キュンの総合デパートである。
主人公がどんな職種であっても、職場での会話やちょっとした仕事のミスの描写にリアリティがあり、ただの夢物語では終わらせない説得力がある。取材を怠(おこた)らない作者の姿勢が伺える。
また、短編作品には必ず濡れ場があるため、胸キュンだけでなくムラムラした気分も味わえる。女性ホルモン促進に一役買うだろう。
筆者のオススメの短編漫画は、『ゆきずりの失恋オトコ』(『君の胸に愛を誓う』収録)と『忠犬男子はおねだり上手』(『美波はるこ男子に恋して胸きゅんセレクションvol.1』収録)。どちらも、お相手はもちろん年下男子だ。

はるこ「きみの胸に愛を誓う (ぶんか社コミックス Sgirl Selection)」
最近、仕事ばかりでトキメキに飢えている方に、是非読んで欲しい。
いつもより少しだけお洒落して職場やバーに行きたくなるはずだ。素敵な年下との出会いに期待してみよう。
<文/藍川じゅん>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】藍川じゅん
80年生。フリーライター。ハンドルネームは
永田王。著作に『女の性欲解消日記』(eロマンス新書)など。