裕子さんと彼は、深夜に大通りをレースのように追いかけっこしたそうです。
「彼は店を出ると、ものすごい速足で歩きだしたんです。私も置いて行かれないように追いかけました。途中、すごい坂道があってかなり差がついてしまい、結局、先に彼のほうが先に部屋についていて、私の荷物をスーツケースに詰め、それを部屋の外に放り出し、『出て行って』と言われました」
自業自得ともいえますが、窮地に立たされた裕子さん。どのように乗り越えたのでしょうか。
「スーツケースの中を見たら、目についたものを急いで入れたようで、ユニクロの安いパンツや、部屋着しか入っていなくて、とてもじゃないけれどそれでどこかに行けるような物が入っていませんでした……。必死で、『行くところがないので中に入れてください』と頼みました。家の前で暴れると困ると思ったのか、しぶしぶ扉を開けてくれました」
結局、返済はどうしたのでしょうか。
「彼は『ずっと結婚したいのに、私の生活態度のせいでできなかった』と言いました……。私は彼に謝りつくし、結婚しても旅行などもせず、籍を入れるだけで済ませることで、彼が借金を肩代わりしてくれることになりました。彼は、私が渡していた3万5000円に手をつけずにいたので、それも借金返済に回しました」
結果として、ハネムーンもなく地味な結婚式で済ませることになった裕子さん。一度、身についてしまった経済感覚は、なかなか直すのが難しいといえます。でも、二度に渡る借金で、もうカードはこりごりと思ったそうです。
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わたしの恋とマネー体験談―
<取材・文/池守りぜね イラスト/zzz(ズズズ)
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