Vol.17-3 別居中の妻に子を奪われ、月26万の婚費を払う男性がそれでも妻を恨まない理由
「わが子をわが手に留めておきたい」という気持ち
谷口さんは「もし、葉月と子供たちを先に帰国させていなかったら、あるいは……」と言いかけた。しかし、あの凄まじい毒親であれば、どんな方法を使ってでも、葉月さんを手元に置こうとしたはずだ。
「わかっています。長年の精神的DVから逃れるのは、言うほど簡単じゃない。信頼できる友達のいなかった葉月が、囚われた精神を自力で解放させるのは無理だったでしょう。あの親を見ていて、つくづくそう思いました」
時おり、ため息が混じる。
「ときどき思うんですよ。『わが子をわが手に留めておきたい』と願う気持ちって、僕も、葉月も、そして葉月の両親も、根本の部分は同じなんじゃないかって。ただ、葉月の両親はそれが強すぎただけなんじゃないかって」
正直、谷口さんのお人好しさ加減にイラッとした。明子さんとの生活費を10年以上にわたって全額負担し、子供たちを奪った葉月さんに対しても惜しみなく同情する。先ほど谷口さんが口にした「滅私のボランティア精神」という言葉が思い出される。
結婚は2年契約にすればいい
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga


