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別居中の妻に子を奪われ、月26万の婚費を払う男性がそれでも妻を恨まない理由

「釣書や親族書を用意させろ」

 谷口さんが「そう言えば……」と口を開いた。谷口さんの両親のことである。 「前妻の明子が結婚の挨拶でうちの実家を訪れた際、父が『谷口家の嫁になるんだから……』と口走り、そこに明子が食ってかかったことがあります。『私は和成さんの妻になるつもりですが、谷口家の嫁になるつもりはありません』と。僕は若かったので、全面的に明子を擁護したんですが、両親の心象は最悪でした」  谷口さんは1度目の結婚の失敗を踏まえ、2度目の結婚では、葉月さんとの交際時から逐一両親に状況を報告し、都度了解を取り続けた。しかし、あることについてだけ、両親の要望をはねのけたという。 「親から、『先方に釣書(つりがき)や親族書を用意させろ』と言われたんです。釣書は関東で言うところの身上書、親族書は親族のリストですね。要は、“ちゃんとした”家の人間かどうかを調べとけと」  当時の谷口さんは猛反発した。 「僕自身がバツイチなんだから、そんなことを相手に求める資格はないし、谷口家だって大した身分じゃない。先方に失礼じゃないか、いつの時代の話をしてるんだと。ただ、僕が親の要求にそこまで拒否反応を示した本当の理由は、そこに葉月の“血筋”や“出自”を探りたいという意図を嗅ぎ取ったからです」

相手の出自を調べるということ

 ここで谷口さんは、やや声を潜めた。 「実は、僕がまだ学生の時に、父が母に向かってこんな話をしているのを聞いたことがありました。『あそこは親族に△△病がいるから、あいつも云々』『あいつの生まれ、◯◯だろ。あそこはどうのこうの……』。それがはっきりとした“差別”だということは、当時の僕でもわかりました。以来、そういう考え方は断固として根絶すべきだと思ってきましたし、今でも頭では……わかります。ただ、今は、そういうふうに警戒する人たちを、無下に否定することはできなくなりました……」  理由は言わずもがなですよね、というように、谷口さんは筆者を見た。 「この現代社会からすれば、ありえないことです。でも、昔の人たちは、そして親の世代は、そういう情報を“知見”として蓄え、面倒ごとを経験的に事前回避してきました。だからこそ、うちの両親も相手の出自を調べろと」 ※写真はイメージです 谷口さんが拒否反応を示したことで、両親はそれ以上なにも言わなくなった。しかし、ひとりだけ葉月さんとの結婚に反対した人がいた。谷口さんの妹である。 「不思議なんです。葉月と会ったこともないくせに、結婚はやめといたほうがいいと言われました。理由を聞くと、葉月の実家がある県庁所在地について、どうのこうのと。まあ、ひどい誹謗中傷でしたね。でたらめで事実無根の悪口です。しかも、その悪口は、妹が幼い頃から母が吹き込んだものだったことが、後に判明しました」  悪口の内容を聞いた。とんでもなく差別的であるばかりか、何の根拠もない醜悪な決めつけだった。 「ただ、もしかするとですが、妹は僕の結婚に関して何か悪い予感がはたらいたものの、根拠がなかったから、無理やりにでも理由をでっち上げたのかもしれません」 「いずれにしろ」と谷口さんがまとめに入る。 「結婚というものは、事情がどうあれ、自分の家族が祝福してくれる形に持っていかなければならない。失敗した2度の結婚で、それを痛感しました
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妻は被害者だったのかも
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