共働きで、家事の負担はアリサさんのほうが多かったにもかかわらず、「夫の顔を見るとつかれも吹き飛んだ」と彼女は言う。夫がにこっと笑ってくれれば、「何でもしちゃう」という気分になったそうだ。
ところがコロナ禍で、夫は週3日出社、アリサさんが週1日出社となった昨年4月ころから、少しずつ歯車が噛み合わないことが増えていった。最初は一緒にいられる時間が増えたことを喜んでいたアリサさんだが、夫の危機管理がなっていないことが気になっていく。
「ウィルスがどんなものかわかるにつれ、対策も変わっていきましたよね。私は玄関先で服を脱いでバスルームに直行、シャワーを浴びてからリビングに入るようにしていました。もちろん手荷物はスプレーで消毒。今もそうしています。
でも夫はマスクは欠かさないものの、帰宅後は普通にリビングに入ってくる。せめて洗面所に直行してほしいと言ってもダメ。夏にはやたらと飲み会に行っていましたしね」
顔を見ればすべて許せるという話ではなくなっていったのだ。あげく、9月に夏休みをとって沖縄に旅行しようと言い出した。

「沖縄旅行はやめようという風潮の中でそんなことをいいだしたので、いくらなんでもと大げんかになりました。夫に言わせれば私が神経質すぎると。どんなに神経を遣っても遣いすぎることはないと私は思っていたんです。
言い合いをしていると、夫がいきなり私を押したおしてきて。ケンカをセックスでおさめようとするのがすごく嫌だった。なのに夫は『オレの顔を見れば何でも許せるんだろ』って」
そのときアリサさんは自分が間違っていたと知った。だが、これも自分の選択の結果だから、何度も夫ときちんと話し合おうとした。ところが夫の生活は変わらない。以前と同じように毎日出社となった秋以降は、飲んで帰ってくることも多くなった。
そんな中、11月半ばにアリサさんの妊娠がわかった。