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宇垣美里「地震の日、3歳の私は神戸にいた」/映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。 宇垣美里が選ぶ「読むと元気が出るマンガ」と、自虐をして後悔した瞬間 そんな宇垣さんが公開中の映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』についての思いを綴ります。
映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』

映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』

●作品あらすじ:1995年1月に阪神・淡路大震災が起きた時、自ら被災しながらも、被災者の心のケアに奔走した精神科医・安克昌(あん かつまさ)さん。  手探りながらも多くの被災者の声に耳を傾け、心の痛みをともに感じ、寄り添い続けた日々。震災後の心のケアの実践に道筋をつけ、日本におけるPTSD(心的外傷後ストレス障害)研究の先駆者となりました。  在日韓国人として生まれ、志半ばでこの世を去った安医師の遺族や関係者への取材をもとにしたオリジナルストーリーは、2020年1月にNHKで全4回のドラマとして放送され、多くの感動を呼びました。今回、劇場版として再編集されて、劇場公開されます。
映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』

『心の傷を癒すということ《劇場版》』より

 安医師を演じた柄本佑は、放送文化基金賞の演技賞、ギャラクシー賞(テレビ部門)の2020年2月度月間賞などを受賞しました。その妻を演じるのは、尾野真千子。  多くの被災者の心に寄り添う壮絶な日々と、彼を懸命に支えた家族との絆を描く作品を、宇垣美里さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣さんの寄稿)

あの日も今も、弱く傷つきやすい私たちには“寄り添う”存在が必要だ

映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』

『心の傷を癒すということ《劇場版》』より

 その日、私は神戸にいた。今なお鮮烈に残る当時の記憶。急にのしかかってきた母の重み、テレビ画面にまるでゲームのように増えていく死者数、プラスチック片がぐちゃぐちゃに刺さったお気に入りの紙粘土、夕焼けでもないのにずっと赤い東の空。3歳だった。  その後小学校に入学し、最初の1月17日。全校集会で行われた追悼行事、より被害の激しかった地域から引っ越してきた幾人かの同級生が激しく泣き始めたのを覚えている。
映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』

『心の傷を癒すということ《劇場版》』より

 精神科医の安先生が訪れ、膝をつき話を聞いて回った避難所、子どもの無邪気な地震遊びの様子は、私たち神戸で育った人間にとってはもはや当たり前の記憶だ。まるで執念のように、毎年毎年繰り返された震災学習で、自分の記憶なのか伝え聞いたことなのかわからなくなるほど教え込まれてきた。  だからだろう、安先生のその眼差し、穏やかな語り口が優しくて、私ではない誰かが救われているのがありがたくて、涙が止まらなかった。「心のケアって何かわかった 誰もひとりぼっちにさせへんってことや」。安先生のこの言葉をずっと考えている。
映画『心の傷を癒すということ《劇場版》』

『心の傷を癒すということ《劇場版》』より

 きっとこの先も災害は起きる。今まさに未曽有の感染症によって、私たちの何げない日常は奪われてしまった。こんなに文明が発展してもなお、目に見えぬウイルスという試練を前に、社会的弱者ばかりが辛い目に遭う。マスクの形状が違えば叩き、罹れば忌み、最前線で働く人たちをも排除しようとする。怖いからだ。  人間は弱い。すぐに傷つく。私も。だからこそ、安先生のようにいつだって人の傷つきやすさを受け入れ、寄り添える人でありたい。それしかできないんだから。 心の傷を癒すということ《劇場版》』 ’20年/日本/1時間56分 脚本/桑原亮子 出演/柄本佑、尾野真千子、濱田岳ほか 配給/ギャガ ©映画「心の傷を癒すということ」製作委員会 <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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