自宅に戻った後、仕事を終えて帰宅した夫に一部始終を話すと、その場で大きなため息をついて頭を抱えてしまったそうです。
とはいえ、義実家は夫の会社からあまりに遠すぎるため、同居するのも難しい。また、認知症ではないため、離れて暮らす姑の預金通帳を弘子さんたちで管理するのも現実的ではありません。
「結局、その場で結論を出すことができず、いったん保留にして様子を見ることにしました。ただ、私のようによく実家に顔を出している義姉とは情報を共有しておこうと、浄水器のことを伝えておきました。
すると、近々に実家に行く予定だったらしく、『ほかに妙なモノを買ってないか母にそれとなくたずねてみる』と話していたのでひとまず任せることにしました」
結果、高齢者向けの健康セミナーに参加していることが判明したのです。

「それも何度もいろんなセミナーに通っていることがわかりました。しかも、浄水器ほど高額ではなかったですが、ドラッグストアなどで売っているモノよりは明らかに高いサプリメントを1年分といって一度に大量に買わされていたんですよ。
ただ、私の立場ではお義母さんに注意しにくいので、夫と義姉が2人で本人と話をすることになったんです」
姑は最初、悪徳商法だと疑っている様子はなかったそうですが、実の子供2人が何度も時間をかけて説明。すると、ようやく姑も自分がダマされているということを理解してくれたといいます。
「私にも心配をかけてしまったことを謝ってくれましたが、やっぱりショックだったみたいで落ち込んでいるのがわかりました。
近所のお友達に誘われてセミナーに通い始めたそうなんですけど、同年代の高齢者がたくさん来ていて話し相手が多いからってそれで何度も行くようになったみたいです」
高齢者などを会場に集めて、うまいこと盛り上げて商品を売りつける手口は「催眠商法」とも呼ばれ、1990年代から問題になりました。無料商品をプレゼント、として客を集めるケースも多く、いまも警察がHPで注意を呼びかけているほど。ダマされる人が後を経たないのです。
話し合いの末、姑が高い買い物をする場合は、事前に義姉か夫、弘子さんのいずれかに事前に伝えるというルールを設けることで決着。今でも健康セミナーに通うこともなくなり、今回の浄水器のような高額商品を買わされる被害には遭わなくなったそうです。
「私たちも何でもかんでもダメと言うわけではなく、明らかにおかしいと思った場合しか言わないようにしています。そのせいか、ちゃんとしたメーカーのものでそんなに値段も高くないですが、相変わらずいろんな健康器具や健康食品を買っているみたいです。まあ、半分趣味みたいなものなのでそこは本人に任せていますけどね」
しかし、一度でも悪質商法に引っかかった場合、購入者のリストが業界内に出回り、何度も似たような被害に遭う人も。そうならないように家族としてしっかり見守ってほしいものです。
―シリーズ「
トンデモダイエット・トンデモ健康法」―
<文/トシタカマサ イラスト/真船佳奈>
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。