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松坂桃李が“ハロプロ”オタクを演じる『あの頃。』監督×原作者が語る

 ベーシストで、神聖かまってちゃんの元マネジャー、そしてコラムニストの犬山紙子さんの夫でもある劔樹人の自伝的コミックエッセイを原作とした映画『あの頃。』が、2月19日に公開される。劔さん役は、なんと松坂桃李だ。  ’00年代、ふとしたきっかけで初期モーニング娘。をはじめとする「ハロー!プロジェクト」にハマった劔が、同じ熱い思いを持ったオタク仲間たちとの出会いや別れを経験していく“遅れてきた青春”群像劇だ。監督を務めた今泉力哉と、製作背景や熱狂していた“あの頃”を振り返ってもらった。

推しがいるから頑張れた!ハロプロに青春を捧げた男たち

あの頃。

劔 樹人さん、今泉力哉監督(左)撮影/長谷英史

――私的なエピソードだった原作が、こうして映画になった気持ちは? 劔:まったく予想してなかったですよ。僕の役を演じているのが松坂桃李さんというのがまずおかしいですし(笑)。映画を見た当時の仲間からは、「これは豪華すぎる再現映像だ」って連絡がありました。 今泉:今回、時代考証でわからない箇所は劔さんや当時の仲間に都度聞きながら進めていって。コンサートチケットの実物を持ってきてもらったり、公式のグッズもまんま使ったり。オタク役のエキストラも重要だったので、何日も来られる人は最初にキャスティングして複数の場面に出てもらいました。 劔:オタク用語に“おまいつ”(「お前、いつもいるな」の略)っていう言葉があるぐらいですからね。原作で描いた近鉄バファローズのユニホームを着ている2人組は、映画でも再現してもらったり、こだわりがいき届いてました。 今泉:それこそ脚本の冨永(昌敬)さんと一緒に、劔さんのオタク仲間とも会って当時の話を聞いたりしました。

「俺たちは日本の最底辺だ」という自意識から救ってくれたアイドル

――今回の作品は、いわゆる「推し活」がテーマになっていますね。 今泉:『愛がなんだ』で片思いを描いたとき、相手にまっすぐな熱量を抱けるって羨ましいなと思っていました。「推し」はあくまで恋愛感情とは別物ですが、疲れているときにきれいなものや輝いているものに癒やされたり、それを通じて仲間ができたりするのも、自分にはない経験なので羨ましいです。  何かに心からハマることがない自分は、生命力が低いのかもしれない(笑)。 劔:当時は、「俺たちは日本の最底辺だ」くらいの自意識でいたオタクが多かったので、そんな自分を救ってくれた推しに捧げる熱量がすごいんですよ。  友人がモー娘。のコンサートを見に行くために大雪の北海道に前乗りで行ったら、その後、飛行機が飛ばなくて中止になっちゃって。帰るにも大雪で移動するのが一苦労だから、温かいお茶を足にかけながら歩いたっていう(笑)。
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ホモソ集団から男女半々に変化したハロオタ現場
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