――香芝は失言で左遷されましたが、松也さんが最近やってしまった失敗は?
松也「やらかしですか。いろいろありますけど、洗濯ものを洗い終わって、『あ、終わったな』と思いながら、別のことをしていて、そのまま寝てしまって、朝に、『あ!』と気づくという。洗濯機の蓋のところが水滴だらけになっていて、『うわー』と思いながらもう1回洗い直す、というのはよくやります(笑)」
――家事は得意なほうですか?
松也「いや、別に得意ではないです。必要最低限のことをするくらいですね」
――町へ来て変わった香芝は、吉乃さんをすくおうとします。「人のため」というキーワードから浮かぶことはありますか?
「誰かのためというか、昨年の自粛期間に、エンターテインメントが人に与える力を再確認しました。僕自身も、多くのエンターテインメントも、お客様がいてこそ成立するものですが、日々の忙しさのなかで、ひとつひとつのお仕事にとにかくベストを尽くしながらも、その意義を立ち止まって考える時間はありませんでした。
お仕事から離れて家で自粛期間を過ごしたあの時、結局何をしたかというと、テレビを観たり、映画を観たりと、エンターテインメントに触れていました。それがなかったら乗り越えられていなかった。自分のお仕事の意味、エンタメの重要性を感じました」
――「エンタメ」が人のすくいになっていると。
『すくってごらん』より
松也「人が生きていくうえでのエンタメの占める割合の重要さを感じましたね。具体的にいえば、僕はあの期間を、『ゲーム・オブ・スローンズ』を観て乗り越えました。あんな世界的な大作でなくとも、今まで僕の出演してきたドラマや舞台、この『すくってごらん』で、たとえひとりでも、勇気づけられたり、楽しんでいただける方がいれば。僕にとっての『ゲーム・オブ・スローンズ』のような存在になれたとしたら。とても誇らしいと思いましたし、改めて頑張りたいと思いました。
それから、少し話が変わりますが、『人のため』というか、歌舞伎の伝承ということでいうと、僕自身、まだまだ修行中での身ではありますが、後輩に伝えることで、自分自身が気づくことが多いです。
人のために何かをするということは、自分のためにもなるのだなと、最近よく感じています」
(C) 2020映画「すくってごらん」製作委員会 (C) 大谷紀子/講談社
<文・写真/望月ふみ>
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。
@mochi_fumi