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Vol.20-1 不妊治療に300万円。心が壊れた妻は「これは何の罰?」と号泣した

“いる”だけで幸せなのに…

 石岡さんによれば、咲さんはもともと、人をやっかんだり、罵倒したりするような人間ではなかった。しかし、その夜の咲さんは違ったという。 「彼女は吐き捨てるように言いました。どんなに頭からっぽなモデルあがりの芸能人にも、誰とでも寝ると有名だった中学時代の同級生にも、子供がいる。なのに、私にはいない。今まで下に見ていた、自分よりイタい人生だと思っていた人たちが、自分には絶対持てないものを持っている。でも私は持ってない。それが悔しいし、そういう下劣なやっかみの感情を抑えられない自分が嫌になる、と」 ※写真はイメージです まるで咲さんが憑依しているかのように、感情をこめて話す石岡さん。 「“育児が大変”みたいなブログやコミックエッセイって、結局自慢でしょ? “いる”んだったら、それでもう、いいじゃない。私なんて、“いない”んだよ!? だいたい贅沢なんだよね。“いる”なら、“いる”だけで幸せじゃない。そんなちっちゃいことで文句言わないでって思う」

「妻の“生々しさ”に吐き気を催した」

 これは咲さんの言葉の反芻なのか、石岡さんの気持ちの表明なのか。 「子育てブログやTwitterのママ垢には、“旦那が育児してくれない。旦那死ね。毎日が地獄”って書いてあるじゃない。でも私、思っちゃうんだよ。授かることさえできれば、ワンオペでもなんでもいい。咲はそう言いながら、洗面所の壁や床をグーで何度も叩いていました」  あんなに口汚い彼女をはじめて見ました、と石岡さんは悲しそうに言った。 「咲の裸の人間性を初めて見た気がします。いたたまれなくて、胸が張り裂けそうでした。ただ正直言えば、感情むき出しの咲に怯(ひる)んでいる僕もいて……。彼女の生々しさに、少しこう、吐き気を催したというか……」  「吐き気」という言葉に、発した石岡さん自身が怯んでいるように見えた。
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「これは何の罰?」
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