階段は130段以上ありましたが、これはまだほんの序の口だったそう。ここから先は登山道と言えば聞こえがいいですが、実際には獣道と大差がなかったとか。
しかも、急坂やむき出しの岩場が何か所も続き、設置されている梯子やロープを使わなければならず、登山と呼ぶにはかなり厳しいものだったようです。
「それにヒグマやマムシの出没注意の看板はあるし、ハチやブヨとか虫もたくさん飛んでいました。一応、彼氏は熊よけの鈴や虫よけスプレーを持ってきていましたが、私はどれも現地に行ってから知ったことばかり。そんな情報、事前に知っていたら絶対に拒否していたのに。
そう考えたら彼に対する怒りが沸々(ふつふつ)とこみ上げて来て、後で車に戻ったら文句を言ってやろうと思っていました」
すると、先に音を上げたのはなんと彼氏。言い出しっぺとはいえ、本人もここまで大変とは思っていなかったらしく「疲れた」を連発。ついには「やっぱり戻ろうか……」と口にしたそうです。
「さすがに根性のなさにちょっとあきれました(笑)。第一、この時点で半分以上登っていましたし、天気は良かったので諦めて下山する状況でもありません。だから、後半は私も疲れていましたが、彼のことを励ましながら登っていました」
ところが、ゴールの本殿を前に最大の難所を迎えます。本殿の洞窟があるのは、なんと断崖絶壁の横穴。その真下まで行くことができのですが、そこからは鎖(くさり)をつかんで7メートルほど崖を登らなければならなかったのです。
手を滑らせて落下すれば命の保証はなく、砂奈さんは高所恐怖症ではありませんでしたがさすがに危険と判断してここで断念。ところが、目的地を前に元気を取り戻した彼氏は彼女の反対を押し切り、鎖を掴んで崖を登り始めたといいます。
「彼は『大丈夫だから!』と言いましたけど、見ているこっちからすれば気が気じゃありませんでした。幸い何事もなく本殿にたどり着き、お参りして戻ってきてくれましたが“日本一危険な神社”と呼ばれていたのも納得です。ただ、もう二度と登りたいとは思いませんが、上から見た景色は本当に最高でした」
普通のデートや行楽でこんな危ない場所に行くことはまずないと思いますが、特にアウトドアだと目的に合わせた服装や準備も必要です。事故などのトラブルを防ぐためにもどこに行くのかは事前に確認しておいたほうがいいかもしれませんね。
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<文/トシタカマサ イラスト/ただりえこ>
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。