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「つらくても真実の方がいい」セクハラ経験を描く漫画作者に聞く“誹謗中傷と戦う理由”

“漫画とコメント欄は常に対で読む”読者の声も

――承認する・しないの判断は、担当編集のチル林さんがされているんですか? チル林:そうです。以前はひどい言葉遣いの人がいると、応援したり味方したりしてくれる人の言葉まで汚くなっていって、より殺伐としてしまったり。  今は、自分のつらかった体験を話しても攻撃されない場として受け止めてもらえればと思ってます。傷ついたり嫌な思いをした人たちが安心して読めるようにしたいです。 ――現在のコメント欄は、感想だけでなく読者の方たちの体験談や告白があふれ、一種のサロンのような雰囲気ですね。読者の声を含めて一つの作品というか。 チル林:男性の方に「セクハラの被害者は10代20代の女性ってイメージだったけど、書き込みの中にはずっと苦しんできたという50代60代の女性からの意見もあって、今まで全然知らなかった世界がこのコメント欄にある。だから、漫画とコメント欄は常に対で読んでる」と言われて、作品とコメント欄を通して知ってもらえるのもよかったなと。

会話の全てが「マウント」と「笑い」

――ペス山さんの作品は、加害者側の生きづらさにも目を向けていて、視線が優しいし細やかであると思いました。 ペス山:加害者のことをすごく考えちゃうのは、私自身が加害者的なマインドをすごく持っているからなんです。高校時代、毎日痴漢にあっていた友達に心ないことを言ってしまったり。以前、ツイッターで「(セクハラされるってことは)美人なんじゃないですか?」って、まるでこちらの見た目のせいであるかのようなことを言われたんですが、本質的に同じことを高校の時自分も言ってるんですよね。正直、「そういう目にあいたくないなら、女らしい格好しなきゃいいのに」って思ってたんですよ。  ずっと男性同士のホモソーシャルな価値観の中で生きてると、そういう反応が生まれるんですよね。共感とか、かっこ悪いと思ってる。  小中学校で男友達と話してていつも思うのは、会話の全てが「マウント」と「笑い」なんですね。笑いでオブラートに包んだマウントでしかない。つらいこと・悲しいことがあると背中バンバン叩いて終わり。会話しない、する方法を学んでない。そういう機会がないし、会話しようとすると女々しいことだと思われてしまう。その状態のままずっと生きてくってなかなか難しいですよね。私には、だいたいの男の人が麻酔中毒に見えてます(笑)  女性の扱われ方や有害な男性性といった問題に、個人が丁寧に向き合っていくべきだし、その助けになるような社会通念が形成されるべきだと。そのためには、被害者が絶対に黙っちゃいけないと思っています。 ===========  読者からの反響の大きさに応え、7月30日『女(じぶん)の体をゆるすまで』上下巻 同時発売が決定した。 「女(じぶん)の体を破壊したい」という衝動をありのまま描いた前作『ボコ恋』。彼氏のモラハラを通して、自らの女性差別的な一面に気づく『ボコ恋』番外編。そして、その衝動や差別意識を持つに至る原因を掘り下げ、鋭く考察していく『女(じぶん)の体をゆるすまで』。 「男らしさ」「女らしさ」の呪縛や抑圧をなくしていこうとする大きな流れの中で、これらの作品は、今苦しんでいる人たちだけでなく後に続く人たちにも勇気を与えるはずである。  ファイティングポーズを崩さない漫画家・ペス山ポピーの戦いの記録を、その目で確かめていただきたい。 <文/藍川じゅん> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
藍川じゅん
フリーライター。ハンドルネームは永田王。アダルトサイトにてコラム「鬼性欲ブスのOCCC道場」を連載中。著作は『大好きだって言ってんじゃん』(メディアファクトリー)、電子書籍『女の性欲解消日記』(KADOKAWA)
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