
死別を経験して最も学んだのは、「
今を大切に生きる」ということ。将来のことも大切ではありますが、一番大事にしたいのは、今一緒に過ごすことができている人や今の環境です。自分がこの時間を生きていられるのは、今周りにあるすべての事象のおかげです。これをないがしろにすると、突然失ったときに大きな後悔やダメージを受けます。
せわしない日々を送っていると、ついつい身近な存在を後回しにしがちです。私も夫が発病する前は、友人と夜遅くまで好き勝手に遊びに行っていましたし、少し長めの海外旅行へ出かけて寂しがる夫を放っておいたこともありました。料理の手間を惜しんで「まぁ大丈夫でしょ」とジャンクな食べ物を続けてしまったり、あと20年くらいは夫がいるものだと勝手に考え、しばらく気楽に暮らせるとまで思ったりした時もあります。

そんな、夫という当たり前にいる温かい存在に対してあぐらをかいていたので、最初に夫が脳梗塞で倒れたときは現実が受け止められず、ずっと夢の中にいるようでした。そしてがんが発覚し、「夫を失うかもしれない」という現実に恐怖感を毎日抱え、しばらくは地獄のような日々を過ごしました。あの経験をしてから、今近くにいる人は明日必ずいるものではない、ということを痛感したのです。
しかし、
日ごろから身近な人に対して大切に接していれば、突然の別れがあったとしても、後悔を減らすことができます。ゼロにするのは難しいですが、「あのとき連絡しておいてよかった」、「『ありがとう』を言えてよかった」と思えれば、少し穏やかでいられるはずなのです。