
筆者は合同会社ブラインドライターズという会社を経営しています。主に視覚障害のある方に文字起こしをしてもらうサービスを提供していますが、年配の方ほど、「音声を点字にするの?」と聞かれます。視覚障害者がパソコンを使いこなし、社会の一員として働いているイメージが湧かないのでしょう。
80歳になろうとする私の両親は「
障害者はかわいそう」「自分たちが老いて車いすになっても自分たちは障害者ではない」などと平気で差別的発言をします。周囲の無理解に驚くことが多いです。

「日本ではインクルーシブ教育をやっていないから、障害者に会ったときにどうしたらいいのかわからないのだと思います」
インクルーシブ教育とは、障害がある人を特別学級などで分離せずに、障害のない人と共に学ぶという考え方・システムのことです。
「日本では、同じ学校の同じクラスに普通に障害者がいて、一緒に学ぶ機会はほとんどない。
どこの国でも、だいたい10%くらいは障害者がいるのですが、学校で出会わないので、あたかもいないことになっています。世の中は健常者しかいないと思って育ってきて、とつぜん障害者に出会うと、もうどうしたらいいのかわからないのでしょう。知らないことはみんな怖がりますから、拒否をしてしまう。
例えば、私がお店で店員さんに話しかけても、店員さんは私の隣の健常者に答えるんです。私が聞いているのだから、私に返事をしてほしいのですが、障害者と話したことがないから、『話を理解できるのか』とか『
何か失礼なことを言っちゃ悪いな』と思って、慣れている健常者に答えるのだと思います。
アメリカに行ったときは、みんな躊躇せずに私に話しかけてきました。アメリカは州によって違いますが、インクルーシブ教育をやっているから、小さいときから学校に当たり前に障害者がいるので、慣れているのでしょう」
障害当事者と話さない、というのは視覚障害者からもよく耳にします。何かものを尋ねても、隣のヘルパーさんに返事をする人が多いとか。