「そういわれてみれば、なかなかいい人と出会えていない」と思っている人も多いことでしょう。実は、
いい人と出会えないのは、自分自身が未熟だからなのです。

人間性において未熟なのか、知識や経験、スキルにおいて未熟なのかは、仕事かプライベートかといった、出会いを求める状況によって違うでしょう。けれども、自分のレベルが出会う人のレベルを決めている、という原則は変わりません。
さらに「人生を変える出会い」というものは、いつも突然であり、偶然であり、それでいて必然です。
たとえば、真言宗・開祖の空海和尚は、遣唐使として唐に渡り、密教の正当な伝承者、恵果和尚から灌頂(かんじょう=法を正式に伝える儀式)を受け、阿闍梨(あじゃり)となりました。
空海が教えを乞うために恵果和尚を訪ねたところ、恵果和尚は、空海を見てすぐさま、次なる密教の伝承者と見てとり、密教の大法を授ける手続きに入ったといいます。
どれほど長く修行を積もうが、どれほど高い志を持っていようが、その人に大法を受け継ぐだけの力と可能性が備わっていなければ、大阿闍梨の法を授かることはできません。
しかし空海は、出会ってすぐに、「あなたが来るのを待っていました」と、唐代きっての高僧、恵果大阿闍梨に言わしめたのです。
教えを乞うべき師が現れたなら、すべてを投げ出してでも学びたいと願いながら、誰よりも愚直に努力精進を重ねてきた求道者と、誰もが認める最高峰の師は、出会うべくして出会ったのです。