この言葉がなければ、今の大愚元勝はなかったでしょう。彼の観察眼や感性により、私の構想は絵に描いた餅から、現実の色や形を持ち始めたのです。
私は彼に言いました。「これからは映像の時代です。絵やデザインだけでなく、人々の魂を揺さぶる映像を研究してください」と。その延長で始まったのが、Youtube『大愚和尚の一問一答』です。彼は今、ナーランダ出版という会社を立ち上げ、社長となりました。彼のデザインは商品のヒットを後押しし、彼の創る映像は、プロも驚くほどのクオリティーと感性に満ちていて、企業のプロモーション映像などの引き合いが後を絶ちません。
また、彼は単に優れたスキルを持っているだけではありません。絶対に他人の悪口を言わず、相手の弱みや強みを客観的に評価しながらも、弱みを批判したり嫌ったりすることはなく、その人の魅力や強みだけを見て誰とでも楽しく付き合うことができる奇特な性格の持ち主です。そんなところに私は大いに学ばせてもらい、また大いに助けられています。
この人と出会っていなければ今の自分はいない。そのような出会いこそが、「我逢人」なのです。
なぜ私があなたに「我逢人」という言葉を伝えたいのかというと、私のように何の後ろ盾もなく何かを始めようという人にも、必ず、希望に満ちた出会いがあるということを知ってほしいからなのです。出会いを大切に育めば、不可能が可能になっていくのです。
出会いは自分自身が試されるもの。いい出会いがないという人も、自分を高めるために真剣に学び、出会う準備ができていれば、必ず良き出会いに恵まれます。
いい人に出会えないと気落ちするのではなく、自分がいい人になれるよう、努力を重ねていきましょう。必ず、自分に見合う人が現れ、一緒に未来を切り拓いていくことができるはずです。
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いつも何か満たされない人へ。生きづらい人を救う大愚和尚のことば
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SNSでマウントしあう人へ。妄想と怒りをしずめる方法を、大愚和尚が語る
<文/大愚元勝>
大愚元勝
佛心宗大叢山福厳寺住職。慈光グループ会長。駒澤大学、曹洞宗大本山總持寺を経て、愛知学院大学大学院文学修士号を取得。僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持つ異色の僧侶。愛知県小牧市に540年の歴史を誇る禅寺、福厳寺の弟子として育つも、厳しい師匠や堅苦しいしきたり、「お寺の子」と噂される重圧に反発して寺を飛び出す。32歳で起業。慈悲心を具現化したいと、複数の事業を立ち上げて軌道に乗せる。社員教育は人間教育であることを実感し、40歳を目前に寺に戻ることを決意。平成27年に福厳寺31代住職に就任