私にも、
「人生を変えるような」弟子との出会いがありました。
かれこれ10年余り前のことです。私は先代から住職を引き継ぐにあたって、500年以上続いたお寺を、次の時代にどう受け継ぐか、という新時代に向けたお寺のあり方について思案していました。そこに紹介者を通して、僧侶でありながら、デザインを専門に勉強してきた、ある男性と出会ったのです。
私がそのことについて打ち明けたところ、彼は、私の頭の中にある、非常に抽象的な未来構想を絵にすることができました。しかも、「そうそう、それが言いたかったんだ!」と自分でも言語化できていないようなニュアンスまで汲み取って、私の頭の中をさらに昇華させて表現するのです。これがどれだけ稀有で貴重なことなのかは、プロのデザイナーに大金を払って何かのデザインを依頼しても、なかなか思ったような仕上がりにならないジレンマを経験したことがある人ならばわかると思います。
今思えば、奇跡のような出会いでした。彼と出会わなければ、私の頭の中にあったことを実行に移すことは難しかったでしょう。彼には、もともと見聞きした「想い」や「物語」をわかりやすく絵図に描き表す特殊な能力がありました。
聞けば、すでに幼少の頃から、彼の家では、兄弟や従妹が集まると、言葉ではなく、絵でコミュニケーションをとっていたというのです。まさに天性です。それでいて、彼は自分の才能を活かす機会に恵まれず、親戚の叔母さんの家を間借りして、悶々としていたのです。
彼は私に言いました。「大愚和尚は時代に風穴を開けていくアーティストです。感性の赴くままに行動してください。そして目の前にある壁を思い切り壊してください。後の処理は僕たちがやります」と。