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マルチ2世、唯一のメリットは「免疫があるので、だまされないこと」

Eさん姉も、同様に勧誘されることが多い。 「老後の不安を煽って、副収入になるよと勧められたと話していました。寝ていても月5~6万入ってくるんだよ!だそうで。姉とふたりで、そんなうまい話は転がっていないと苦笑いです。親たちの活動をさんざん見ていますから。母をマルチ沼に引っ張り込んだ友人Hさんのように、それなりの収入を手にしている人は勉強会だパーティだと頻繁に主催して、会員獲得のために必死で働いている」 マルチ商法に限らずスピリチュアル教祖などもそうだが、発信を観察していると、それなりに羽振りのよさそうな人たちは感心するほどよく働いている。発信内容は「誰でもできる!」「たったこれだけで!」と手軽にできるかのようにアピールするが、動きを追うとまったく楽ではないことがよくわかる。

「ほどほど」に見守る加減のむずかしさ

「さらに、人に夢を見せないといけませんよね。あの人と毎週会えるなんてすごいことだみたいな、みんなのモチベーションとなるようなカリスマ性、タレント性。トップクラスになると宗教家っぽい人も多いですね。普通に働くより、ぜんぜん大変ですよ。寝ているだけで? 無理無理。破産するとかの泥沼展開は母の周囲では見たことがありませんが、それなりに大変な世界だということはわかっています」 Eさん母がマルチ商法に関わることについては「ほどほどになら」と許容しているが、自分たちがほどほどに参加する気にはまったくならないようだ。 ホームパーティ「母の付き添いで集会に参加させられていたこともあるんですが、やはり異様な集団だとは思っています。みんな張り付いたような笑顔でやたら夢を語り、自己啓発やスピリチュアルトーク。母はこんな人たちと知り合いで、大丈夫か……と思わなくもありません。すごいムラ社会な感じがあるのも、僕にはちょっと厳しいかな」

転落や破滅はしなくても

生きがい、仲間、成功、安心。これらを求める気持ちは人として当然のことだが、様子のおかしいコミュニティにどっぷりつかっていれば、家族が心配するのもまた、当然だ。 しかし、母の棲むマルチ沼をこの先も見つづけていくしかないだろうと、Eさんは語る。わかりやすい転落や破滅のマルチ商法エピソードではないが、決定打がないまま微妙な気持ちを抱えつづけていくのも、苦しさのひとつだと感じられた。 「母がマルチ沼にいるかぎり、僕たち家族も間接的に沼と関わらざるをえません」 家族の沼の、ありがたくない特等席。そうした眺めを、今後もお届けしていこう。 <文/山田ノジル>
山田ノジル
自然派、○○ヒーリング、マルチ商法、フェムケア、妊活、〇〇育児。だいたいそんな感じのキーワード周辺に漂う、科学的根拠のない謎物件をウォッチング中。長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、当連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。twitter:@YamadaNojiru
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自分が身内が友人が沼ったご体験談を募集中です。当連載における沼とは、科学的根拠のない健康法やマルチ商法、過激なフェムケアや自然派思想など、主に健康問題に関わるものにハマることを示します。お気軽に、山田ノジルnojiruyamada@gmail.com まで、ぜひご連絡ください(お返事に時間を頂戴する場合もあります)。
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