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子どもにワクチン打たせない、薬も飲ませない…“自然派育児”をするママの沼

子どもが虫歯になったらレメディという砂糖玉(民間療法のひとつ、ホメオパシーで薬として使うもの)を与える。ワクチンを打ったり医薬品を使ったら負け。発熱したらキャベツを頭にかぶせる。市販のお菓子は与えない。おむつは布が基本で、使い捨ての紙タイプは体に悪いと信じていた。 そんな「自然派育児」にハマっていたことを「黒歴史」だと話すのは、40代の女性Mさん。今なぜそう感じているのか。今回はこの沼について、話を聞いていく。 【自然派ママの沼・中編を読む】⇒赤ちゃんのおしり丸出しでピクニック?ディープな“自然派ママ”の仲間だった私が黒歴史を語る 【自然派ママの沼・後編を読む】⇒「子どもにワクチンを1本も打ってないことが不安になった」ディープな“自然派育児”から抜けだした女性が語る後悔
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※写真はイメージです(以下同)

Mさんが自然志向となったのは「アルコールを飲み過ぎて胃を壊した」ことがきっかけ。いわゆる「健康不安」というヤツだ。 「そこから、ちょっと食事に気をつけたほうがいいかなと思い立ったんですよね。マクロビ教室に行ってみたり、生活クラブ(※1)をはじめてみたり。そうしてなんとな~くゆるく自然派の知識を得た後に、たまたま妊娠出産。すると子どもにはよりよいものを与えたい!という気持ちが生まれ、あっという間に自然派ママの誕生です。子どもが生まれてからのめり込んだので、妊娠出産に関しては、自然であることにあまりこだわりませんでしたけど」 (※1)生活クラブ:無添加・国産・減農薬にこだわった食材を宅配する生協

インスタグラムが沼の入り口

当時Mさんの周りに、自然派ママはいなかった。そこで情報を得ようとはじめたのがInstagram。今でもInstagramには「#自然派ママ」「#自然派育児」「#自然派ママと繋がりたい」「#無添加ママ」「#自然派子育て」などのハッシュタグが無数に存在している。それらをたどって発信者をフォローすると、パズルゲームのようにババババっと自然派ママたちとつながり合っていく。価値観がどんどん上書きされていき、自然派にどっぷり染まるまで、数カ月もかからなかった。 自然派ママたちとのコミュニティでは、それまでの友人らとはまったく違う常識が共有されていく。 「まず、ワクチンNGは当たり前。病院には基本行かない。行ったとしても診断だけしてもらい、処方された薬は子どもに飲ませません。不調があっても世の中で主流の医療より、自然治癒を優先します。ママ友たちと、薬やワクチンをやったら負け!みたいに考えていましたからね。だから頼りにする医師は、基本的に現代医療を否定する傾向が強い内海聡先生や、豊受クリニックの高野弘之院長。そうした自然派寄りの医師たちだけです。私もわざわざ電車に乗って、子どもの健診に豊受クリニックへ行っていました。そして子どもが体調を崩したら、レメディを飲ませていたんです」

具合が悪くなったら「砂糖玉」

自然派ママ202212-1bレメディとは、ホメオパシー(※2)という代替医療で使われる薬のこと。薬と言っても医薬品ではなく、植物、動物組織、鉱物などを水で100倍希釈して振盪(しんとう=激しく揺り動かす)するといった作業をくり返して作った液体を、砂糖玉に浸み込ませたものだ(要は砂糖玉)。医薬品と違い副作用がないことで一部自然派から支持されているが、日本医学会のHPには「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています」と記載されている。しかし、標準医療を選びたくないからこそ受け入れた療法なので、当時のMさんがそれを知っていたとしても、何の意味もないだろうが。 (※2)ホメオパシー:「ある症状を引き起こす物質を薄めると薬になる」という考えが軸になっている民間療法。一般的な科学では、元の物質はまったく含まれていないと考えるのが妥当であるものの、ホメオパシー理論では物質は薄めれば薄めるほど効果が高いと主張されている。医療事故として有名なのは、2009年の「山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故」。助産師の指導のもと、ビタミンKを投与せずにビタミンKと同様の効果を持つと主張されるレメディ(砂糖玉)を新生児に与え、結果生後2カ月で硬膜下血腫が原因で死亡した。
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自分が身内が友人が沼ったご体験談を募集中です。当連載における沼とは、科学的根拠のない健康法やマルチ商法、過激なフェムケアや自然派思想など、主に健康問題に関わるものにハマることを示します。お気軽に、山田ノジルnojiruyamada@gmail.com まで、ぜひご連絡ください(お返事に時間を頂戴する場合もあります)。
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