ある日、ご夫婦に「遊びに来ない?」と誘われた美恵さんは手土産を持って向かいました。
「その少し前に『買いすぎたから』とお菓子をいただいていて、お礼をしたかったのでちょうどよかったとそのときは思いました。もらいっぱなしでは申し訳ないし、うちはあげるものなどないから、それまでの感謝もこめてちょっと高めのお菓子を買っていきました」
美恵さんが部屋に入ると、リビングにはたくさんのゴミ袋が置かれていてびっくりします。

どうしたのか聞いてみると「明日、不燃物で捨てるものなの」と言われ、納得してソファに座ったらすぐに奥さんが袋の一つを美恵さんの前に持ってきました。
何だろうと見ていたら、「
これ、あげる」と言われたので開いてみると、なかには焦げたフライパンに使い古しのおもちゃのブロックが。
「え?」
「意味がわからず思わず声を挙げた」と話す美恵さんは、奥さんの意図がわからずに混乱したそうです。

「
まだ使えるのよ。もったいないから」と重ねて言うけれど、持ち手は焦げて錆びの浮いたフライパンをこちらに渡そうとする奥さんの姿は、美恵さんには受け入れられないものでした。
「いえ、フライパンは間に合っているから……」と何とか答えた美恵さんに、「
それ、有名なブランド品なんだぞ。名前を見てみたらいい」とおどけた調子で言ってくるのは旦那さん。
そういう問題じゃない、と美恵さんは思ったけれど、角を立てるのも悪いと思って
「ありがたいけれど、この間買ったばかりのものがあって」 と、とっさの嘘を口にしました。