「私は彼に恋してしまい、毎週、彼のエステを受けました。どうしても彼と個人的な関係になりたいという思いが拭(ぬぐ)えなくて……。
チップをはずんだり、週に2回頼んだりといろいろなことをしたけど、彼の個人連絡先は知らせてもらえない。
ある日、仕事帰りに空を見上げたら、とってもきれいな満月だったんです。彼に知らせたい。そう思ったけど連絡先を知らない。涙があふれました」

そして彼女は、エステのときに彼の携帯を盗み見ようとして、彼に咎(とが)められた。
もうあなたなしでは生きていけないの。そう言って泣いた彼女に彼は、「
ごめんなさい。僕にとってこれは仕事なんです」とつぶやいた。最後にぎゅっと抱きしめて去っていった後ろ姿を見て、彼女は「死にたい」と思い、自殺未遂を図った。
「バカですよね。子どももいるのに何を考えたいたのか……。
でもそんな私を見て、夫が少し反省したのはケガの功名というか。私の自殺未遂が恋愛感情のもつれだなんて、夫は思ってもいないから、日常生活に疲れたんだと思い込んだみたい。『きみにばかり負担をかけた』と言ってくれたんです。
盆暮れセックスはたいして変わらないけど、日常的に夫が家事を負担してくれたり、週末、食事を作ってくれたりすることは多くなりました」
あのころの自分の心の揺れ、快感を求める強烈な気持ちを、メイコさんはときどき懐かしく思い出す。あの彼は今ごろどうしているのだろうと思うこともある。