今作が連ドラデビュー作となった脚本家の生方美久さんも、プロットは書かず、あくまでも「人の感情で物語をつくる」ことに徹したそうですが、「感情で物語をつくる」というのは具体的にはどういうことなのでしょうか。

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「簡単に言うと、こういう時、紬はきっとこんな気持ちだろうな、だったらこう言うだろうなとか、そう言われたら想だったらこう返すだろうなっていうのをどんどんつなげていく、みたいなやり方です。キャラクターたちが頭の中で勝手にしゃべってくれるような感覚で、だから私自身も彼らが口にするセリフを涙しながら書く、ということが毎回どこかしらありました。
ドラマの結末に関しても、1話を書いた時点ではまっさらでしたが、物語が動き始めるなかでちょっとずつちょっとずつ最終回のイメージが固まっていった感じです」(生方さん)
「キャラクターが頭の中で勝手にしゃべる」というのは逆に言えば、それだけのキャラクター設定が生方さんの頭の中で出来ていたということにほかなりません。
脚本を書く前に生方さんはそれぞれのキャラクターがそれまでどういう人生を歩んできたのかというプロフィール的なことや、人生の分岐点になった出来事などをつらつらと書いたキャラクター設定シートを村瀬プロデューサーに渡していたそうですが、「それがすごく面白くて、もうその時点で僕はすっかり心をつかまれてしまいました」(村瀬プロデューサー)。

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そして私たち視聴者もまたドラマのキャラクターたちにすっかり心をつかまれてしまったわけですが、その大きな理由はそれぞれの心情がそのセリフや仕草、目線、表情などから痛いほど伝わってくるからでしょう。
そして気づけばいつの間にか、直接的に描かれるシーンが決して多くないキャラクターの「物語」までもが心の中で出来上がっているのです。
「『好きとか嫌いとか、いろんな意味を全部含めた上での“感情”を丁寧に描く』ということを本気で貫いてきたドラマだったので、それが多くの人に受け入れられたことをものすごく嬉しく思っています。しかもみなさんがそれをじっくりと味わってくださっていることには感動すら覚えてますよ」(村瀬プロデューサー)