
──今のお話もそうですが、松本さんは言葉に誠実に向き合っている印象があります。SNSの投稿に数時間かけることもあるとお聞きしました。
松本:そうですね。SNSの投稿に5時間かかったりとかしょっちゅうです。それがWebニュースで「松本まりかが“病みツイート”を深夜に連投」と取り上げられることも……(笑)。
本作のコメントも、ものすごく時間がかかりました。いろいろなものを書いて「違う」「これも違う」「どうしたらいいんだ」と悩んで……。この作品をやるまでは裕子と慎一(山田裕貴)の関係が理解できませんでした。私は2人のように曖昧な関係はあまりに不安で、きっと耐えられない。私自身は関係ははっきりさせたいと思うタイプ。だから最初は裕子の感性を理解していくのに時間がかかった。
でも演じるためには、裕子の感性を知らなければならない。文字で読んで、想像して、そして演じると、ラブシーンを含めて、「これが救いなんだ、幸せなんだ」と新たな発見がありました。自分の実生活だったら無理かもしれないけど、役を演じることで新しい価値観を否応なく体感できた。行き詰まっていた私に、突破口を与えてくれた作品です。

──先ほど、「撮影時には破綻していた」とおっしゃっていました。今年の春、1か月休みを取るまでは、どのような状態だったのでしょうか?
松本:この数年間で、これまでインプットしていたものを全部出してすっからかんになってしまって。枯渇しているけど、どう補っていいかわからない。だけど、目の前に仕事はあるからアウトプットし続けないといけない状態が続いていました。
一時期は、憧れだったはずの「雑誌の表紙をやる」や、「主演作がある」ことすらプレッシャーになってしまっていました。要は、忙しさやタスクの多さなどで自分の何もかもがアンコントロールになってしまった。それで「私はもう無理だ。才能がない」と行き詰まってしまった。自分を信じるモチベーションがなくなっちゃうと、人ってもう動けなくなるんです。