園田さんは、
それまで莉子さんが2割程度負担していた生活費を、ほぼ全額負担することに決めた。
「莉子はいつも自由になるお金が少ないと僕に不満をぶつけていました。不満が蓄積すれば、いずれは爆発するでしょう。そういう危険を根本から絶つには、僕が全部出したほうがいいなと」
結果、莉子さんの稼ぎはすべて莉子さんの遊興費と貯蓄に充てられるようになった。
さらに、
園田さんが8割がた担当していた家事も、100%担当することにした。そうすれば、家事分担の比率で言い合いになることはない。
「莉子は箱入り娘で一人暮らし経験がなく、結婚当初は掃除も洗濯も料理もまったくできない子でした。だから半分とは言わないけど、身の回りのことくらいはできるようになろうよと説得して、結婚後に少しずつ家事を教えたんです。ただ、うまくできなくてイライラすることも多くて。いつ爆発するかもわからない不安に僕がかられるくらいなら、いっそ全部やってしまおうと」
平日の夜はいつもこんな感じだ。
「
僕が毎日夜9時頃に帰宅すると、5時半退社の莉子はゲームをして待っているので、僕が料理を作って一緒に食べる。もちろん莉子のリクエストを100%聞いた献立です。帰宅があまり遅いと夕食がずれこみ、『翌日、胃にもたれる』と莉子の機嫌が悪くなるので、何かデリバリーして先に食べていてもらい、僕はお詫びにスイーツを買って帰る」

「腫れ物に触るような」という表現がぴったりだ。完全なるご機嫌取りではないか。
「そうですよ。だけどヒステリーを起こして目の前で物を壊されるより、ずっといい」
園田さんより若干早い出社時間の莉子さんは先に就寝するが、莉子さんはほぼ毎日、こう言ってきた。
「
寝かしつけに来て」