生活費も家事も夫がほぼ全負担…「妻の顔色だけをうかがう生活」を続けた理由
薬の力を使って抱く
「当然、莉子は『私に女性としての魅力がなくなったの?』と不満げに言ってきました。まさか自分のヒステリーが原因だなんて彼女は思ってないし、僕も絶対に言わない。言えばまたヒステリーになりますから」
しかし、このまま拒否し続けていれば、いずれ莉子さんは不満を爆発させ、結局はヒステリーを起こす。園田さんは“薬の力”を借りた。
「いわゆるバイアグラ的な、勃起不全用の薬を飲みました。飲んでもこの程度か、というくらいの効果でしたが。とにかく、数ヶ月に1度の“おつとめ”はそれで乗り切りました」
園田さんは、あらゆることが「莉子さんの望み通り」になるよう知恵を絞り、工夫を重ね、配慮を施した。その甲斐あって莉子さんのメンタルは安少しずつ安定していったが、その状態をキープするには日々の工夫や配慮をやめるわけにはいかない。園田さん自身もそれをよくわかっていた。
園田さんの会社のCEOの言葉「とにかく仕事ができる男」が思い出される。さぞかし完璧に、莉子さんの“介抱”を行っていたのだろう。抜けも漏れもない、完璧な仕事だ。
それが異常だという自覚はなかった
稲田豊史
編集者/ライター。1974年生まれ。映画配給会社、出版社を経て2013年よりフリーランス。著書に『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)『ぼくたちの離婚』(角川新書)、コミック『ぼくたちの離婚1~2』(漫画:雨群、集英社)(漫画:雨群、集英社)、『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。【WEB】inadatoyoshi.com 【Twitter】@Yutaka_Kasuga


