
湊斗君の胸キュンな名言の数々の中でも、筆者が特に気になったものがある。それは、第5話、紬と湊斗君は別れ、彼女が彼の家に荷物を取りに行った場面。湊斗君に対してまだ気持ちを残している紬が、ソファでパソコンをいじる湊斗君の隣に何気なく座る。自分のことを好きになった瞬間のことを聞かされ、短く笑ったあとに彼は言う。
「自分のこと好きな人、好きになると片思いできないよね。もったいないよね。楽しいのに。片思い」
湊斗君はさりげなく言い終えて、またパソコンをかたかたはじめる。さりげないけど、揺るぎない。「主成分、優しさ」と紬に評される湊斗君渾身の名言である。紬に「どうする?」と聞かれ、またさりげなく「別れるよ」と言い切る。これまた揺るぎない!
紬が通う手話教室の講師・春尾正輝(風間俊介)の大学院生時代がサイドストーリーとして挟み込まれた第8話。同じ大学に学部生として通っていた桃野奈々(夏帆)が、春尾とやり取りするノートパソコンに「ありがとうって使いまわしていいの?」と打ち込んだ。これまた奥深い一言。第8話は、湊斗君以外にもサブキャラクターによる名言が頻出する。
再び湊斗君の名言。紬の弟である青羽光(板垣李光人)と親友の横井真子(藤間爽子)が湊斗君の家で宅飲みする場面も見逃せなかった。3人が参加する全体ラインの名前が、「紬を幸せにし隊」。隊長に任命された湊斗君がここでも、さりげない一言を発する。真子が飲みきった缶ビールを掲げると、湊斗君は温かな表情を浮かべて「飲んだらないよ」とごく当たり前のことを言うのだけれど、これがとても味わい深く聞こえて、ジワジワきてしまう。
湊斗君の言葉には、不思議な力がある。彼は手話を話すことはできないが、その分、自分が話す言葉には誠実である。小さな日常の中にでも、さりげない言葉をさりげなくぽんと配置しているかのようだ。