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宇垣美里はどう見た?鈴木亮平×宮沢氷魚が演じるゲイカップルの愛とエゴと運命

 元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。  
宇垣美里さん

撮影/中村和孝

 そんな宇垣さんが映画『エゴイスト』についての思いを綴ります。 映画『エゴイスト』●作品あらすじ:東京の出版社でファッション誌の編集者として働く浩輔(鈴木亮平)が出会ったのは、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)。惹かれ合った2人は、時に龍太の母(阿川佐和子)も交えながら満ち足りた時間を重ねていきますが、突然思いがけないことが…。  コラムニストの故・高山真さんの自伝的小説を『トイレのピエタ』『ハナレイ・ベイ』で知られる松永大司監督がドキュメンタリータッチの映像で映画化した本作を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です。)

「愛は身勝手」ずっと頭の中をぐるぐる回り続けている

映画『エゴイスト』

『エゴイスト』より

 大切な人のために、何か自分にできることをしたい。大切な人のかけがえのない人のことを、同じくらい大切にしてあげたい。自分の中に確かに存在する相手を想う気持ち。でもそれは、本当に相手のため、なんだろうか。「愛は身勝手」、ポスターに記されたその言葉がずっと頭の中をぐるぐる回り続けている。  14歳で母を亡くし、田舎町でゲイである自分を押し殺しながら育った浩輔。現在は東京の出版社でファッション誌の編集者として働き、仲間たちと自由な日々を謳歌している。ある日彼は、シングルマザーの母を支えながら働く、パーソナルトレーナーの龍太に出会い、互いに惹かれ合っていく。閉塞した格差社会で出会うべくして出会った二人のロマンスは、やがて思いもよらぬ運命を辿(たど)ることになる。 映画『エゴイスト』 柔らかな自然光に彩られた映像の絵画のような美しさといったら。吐息を感じるほど近くから撮られたカメラワークや、セリフっぽさのない何げない会話によって、温かな彼らの日常がドキュメンタリーかと錯覚するほどナチュラルに映し出されている。

エゴは狡くて優しくて、温かくて寂しくて、だから全部愛だった

映画『エゴイスト』 鈴木亮平演じる浩輔のハイブランドの服装や、描き足した眉毛で武装する一方で隠し切れない繊細さや、龍太役の宮沢氷魚が浮かべる天使のような笑顔にふと差す陰、龍太の母を演じた阿川佐和子の包み込むような存在感。ただそこに生きているようなキャスト陣のリアルな佇(たたず)まいは圧巻の一言。  共演者に当事者をキャスティングした説得力あるゲイ描写や、“普遍的な愛の形”などという陳腐(ちんぷ)なワードを使わない宣伝に、信頼できる作り手の作品だと感じた。  描かれる三者三様の愛の形。それぞれのエゴは狡(ずる)くて優しくて温かくて寂しくて、だから全部愛だった。表裏一体な愛とエゴの間でもがき苦しみ、それでも自分にできることは全部せずにはいられない浩輔の姿がただただ愛おしい。  私たちはみんなエゴイスト。愛がなんであるのかわからないまま、ただ相手がそう受け止めてくれることだけを祈って想いを育み、救い、救われ生きていく。 エゴイスト』 監督/松永大司 出演/鈴木亮平、宮沢氷魚、阿川佐和子ほか 配給/東京テアトル ©2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会 【他の記事を読む】⇒シリーズ「宇垣美里の沼落ちシネマ」の一覧はこちら <文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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