退院した大輔が自宅に寄り、夫婦は初めて心からの会話を交わした。大輔は子どもを流産させたことやモラハラを詫び、茜もまた「あんなやり方をするんじゃなかった」と一連の行為を謝罪する。もう一度やり直したいと思いながらも言い出せない大輔。ただ、「もう遅いか」とつぶやくと、茜が「遅いよ」と答える。

「
これからどうやって生きていけばいいんだろう」と言う大輔に、「そういう話をふたりでしたかった」と答える茜。
そしてラスト。花束をもった茜が道を歩いている。反対側の道には花束を持った大輔が自宅マンションへと歩いていく姿がある。茜は大輔に気づいたようだが、そのまままっすぐ歩いていく。マンションの部屋が写ると、そこには大輔が持っていた花束が置かれていて、壁にかかっていた茜の大好きな絵(大輔が描いた)がなくなっている。
これだけ見ると、茜は自宅を出て行ったのだろうと想像できるが、一時的に離れて再会、また新たな関係を構築するのかもしれないと期待もできる終わり方だ。
会社の先輩後輩、上司と部下のような関係から結婚すると
この夫婦、最初からどこか対等な関係ではなかったのだ。先輩でクリエイターとして名前が出始めていた大輔と、新入社員だった茜の出会い。大輔の父親は、会社を経営しているが、茜は両親を事故で同時に亡くしている。そのあたりを義両親に揶揄(やゆ)される場面もあった。結婚と同時に、茜は夫を支えるために退職。大輔の親に買ってもらったのかどうかはわからないが、ふたりは若さに似合わぬ高級マンションに住んでいる。

会社の先輩後輩、上司と部下のような関係から結婚すると、その当時の上下関係を引きずりがちだとよく耳にする。
対等であるべき夫婦の力関係が、はなから決まってしまうのだろう。
茜は、「仮面さん」の助けを得て、夫を社会的に抹殺した。人格を破綻させるという目標は、仮面さん自身がそうしてほしかったのかもしれない。大輔の人格を、もうひとりの大輔が許せなかったということだろうか。