夫への復讐で、私自身が今までにいちばん怖い話だと思いながら聞いたのは、40年連れ添ってきた夫が寝たきりになったときの妻の態度だ。彼女の夫は、今でいうDV夫で、彼女は専業主婦として3人の子をワンオペで育て上げた。
そして夫は定年退職、ちょうど結婚40年を迎えたところで脳卒中を患い、家でほぼ寝たきり状態となってしまう。
66歳の妻が、68歳の夫を介護していたのだが、妻は少しずつ夫に復讐していく。

写真はイメージです
「もう慣れてきたから、数時間なら夫をひとりにして出かけてしまうの。そのときは夫が寝ている布団の周りに、水やティッシュを置いていく。夫がどうがんばっても、手が届きそうで届かない場所にね。帰ってくると、おそらく水を飲みたかったんでしょう、
夫が必死で布団から這いずりだして水をとろうとしていた形跡がある。でも力尽きてとれないのよ。それを見ると毎回、スカッとするの」
そんな復讐をするくらいなら、もっと早く離婚していればよかったのにと思うのは、第三者の言い分だろう。離婚できなかった彼女が、最後に自分を慰めるためにそうやって些細な復讐を繰り返しているのだ。
スカッとすると言いながら、彼女の顔は歪んでいた。これまでの自分、そして今の自分も許してはいない表情だった。これほど怖い話はない。
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<文/亀山早苗>
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