Entertainment

King Gnu井口理の“俳優としての才能“がスゴい。映画『ひとりぼっちじゃない』にみる魅力

さえない日常感を見事に表現

©2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会 アーティストが俳優になったら、全員が全員、ガガや井口のようになるわけではない。例えば、福山雅治の場合、「ガリレオ」シリーズに顕著なようにアーティストとしても俳優としてもカリスマ性を強く押し出している。福山のイメージにはかっこよさが絶対に必要だ。  逆に井口は、徹底的にカリスマ性を感じられないように心がけている。井口が演じる歯科医師・ススメは、陰気な性格で、人とあまりうまくコミュニケーションが取れない。映画冒頭からとにかくさえない印象を与え続ける。  ススメが勤めるクリニックの院長からも看護師からも全然相手にされず、帰りに立ち寄る中華屋では水のお代わりすらもらえない。横柄な態度の店員に気圧されて、空のコップをテーブルの隅っこに置き、注いでくれサインを出すのがやっと。このさえない主人公の日常を井口は見事に表現している。

俳優としての才能に恐れ入った瞬間

©2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会 本作はストーリーがあってないようなものというか、あらすじ的にはよくわからない。ところが、俳優としての井口の魅力に気づいた途端、彼の演技にぐんぐん引き込まれる。  ススメには一応好きな相手がいる。植物だらけの部屋で植物園のような空間を作る宮子(馬場ふみか)が謎の人物として映る。馬場のポカンとしたミステリアスな雰囲気が井口の演技を引き出す。いつもはススメが宮子の部屋に通う側なのだが、右足を骨折した彼の家に宮子がやってくる場面が素晴らしい。  料理を作るねと言ってサラダを運んできた彼女の足元にススメが腹ばいになって近寄る。彼女の右足首に誕生日プレゼントのアクセサリーをつけてやる。宮子は足元を見て綺麗と一言だけ発し、ススメは頭上を仰ぎ見る。この低いポジションでの井口の表情、上を向くタイミングなど、完璧に計算されている。俳優としての才能に恐れ入った瞬間だ。
次のページ 
井口理が俳優として歌う童歌
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ