
地元一番の酒蔵「峰屋」に幼い頃から奉公する竹雄は、言わば、ドラマ全体のバランスを取る存在でもある。第3週第12回、縁談をしてきた槙野綾(佐久間由衣)と会話する場面は、必見だった。
万太郎と同じように、神社の境内裏で仰向けになって寝そべる綾に対して、竹雄は、さっと側に座る。座ると言っても、ベタッと地べたに座るのではなく、やや腰を浮かせた状態で正座する。近すぎず、遠すぎず、綾との間を保つ距離感も絶妙。
事の次第をとうとうと話す綾を包み込むように見つめ、ただただ瞬きを何度も繰り返す。落ち葉が敷きつめられた一帯に、優しく佇む志尊の演技は、一糸乱れない。各場面のひとつひとつを丹精込めて支えようとする縁の下の力持ちのような存在感だ。

とは言え、竹雄も人の子だ。密かに心を寄せる綾との関係性にもんもんとすることもある。ある夜、神妙な面持ちの竹雄の姿があった。上っ張りを脱いでいる。何をするのかと思えば、桶に水を汲んで、ざばっとそれを頭からかぶる。邪念を払おうということか。
水も滴(したた)るいい男とよく言うが、いやいや志尊の場合は、何かもっと透明感のある印象。桶を頭上までかかげると、当然、脇が見える。でも脇毛は生えていない。剃ってるのか、剃ってるわけではないのか。そんなことはどうでもいいが、このツルンとした脇にまで冷水が、深く深く浸透する。
しかも、水をかぶった瞬間、「うおっ」と身震いするような声をあげる。この野太い声が、やけにリアルに感じる。単なるセクシーショットなのかと思ったら、そうではない。志尊は、こんなサービスショットでも予想を超えた演技を繰り出す。