――その後、たにゃ君を保護し、一緒に住むことになるわけですが…いまの暮らしを教えてください。
たにゃパパ:たにゃはずっと長い間、不衛生で寒くて、暑くて、うるさくて、ご飯も水もない世界で過ごしてきました。ビルとビルの50cmほどのすき間がたにゃの住処でした。ビルの窓から捨てられたであろうゴミに囲まれて…。
だから、たにゃがうちに来たからには、部屋中をピカピカにしておきたいんです。僕は独り暮らしですが、掃除はめちゃめちゃがんばっていますし、たにゃに必要ないものは置きません。テレビは音や光が苦手みたいなので撤去して、洗濯機も脱水の音を嫌がるのでもっぱらコインランドリーです(笑)。僕よりずっとずっと頑張ってきたので、安心して過ごしてもらいたいですね。

家で安心して寝ているたにゃ
普通にいくとたにゃの方が先に死ぬんでしょうから、必ず、笑ってお空に行ってもらえるようしたいなとは心がけています。野良猫だったけど、最後は楽しかったから、まぁいいかって思ってほしい。
――たにゃパパさんはたにゃ君の、たにゃ君はたにゃパパさんの命の恩人なんですね。
たにゃパパ:たにゃに会ってなかったら、きっと僕は死んでいたと思います。「つらい状況をわかってほしかった」って思いと「やるだけやってダメだった」って思いとで。逃げ出すってことではなく、責任感から自死を選んでしまっていたんじゃないかな。あるいは自己破産しているか…。

外ではこんなところに住んでいた
といっても、命があるだけで、今もなにも状況は変わってないんですけどね。借金もあるし…。たにゃに出会ったらお金が返せたって話ならもっといいんですけど(笑)。
今、僕の頭の中からたにゃのことを除くと、借金と仕事のことだけになってしまいます。好きな人がいるわけでもないですし、毎日できる趣味があるわけでもないですし…。僕は2019年までは自転車でレースに出ていたんですけど、コロナ禍では開催されなくて。
つらい中でも、1つ寄りかかれる存在があったから今僕は生きています。朝起きたら「たにゃにご飯あげよう」とか「お水を替えなくちゃ」とか。ペットショップに行って、新しいベッドを探したり、おやつを買ったりするのも、ウキウキしちゃうんですよね。自分の24時間のうち、仕事や借金のことを考えない時間が、とても僕をラクにしてくれるんです。