恋愛依存の「メンヘラ」主人公、意外と読者から共感コメント
――『パコちゃん』を描こうと思った動機を教えてください。
我妻ひかり:一人の人間にじっくり向き合って、恋愛依存になってしまう人のことを考えてみようかなと。なんで恋愛依存になっちゃうのか、どうやったらそれが改善されるのか、もしくは改善しなくてもいいのか。何がその人にとって幸せかわからないし、私の中でもまだ答えは出てないんですけど、連載を続けていくうちに何か見えてきたらいいなとは思っています。
――『パコちゃん』を描くにあたって、気をつかっている点、気を付けていることは?
我妻:恋愛観とかセックスに対する考え方が健全じゃない人の視点で物語が進んでるので、読む人にどう受け取られるのかなっていうのが、気をつかうというか一番気になるところです。健全な人から見たら理解し難かったり、気持ち悪いと思ったりするだろうなと。
読んだ人が「うわっ、気持ち悪い!」ってなって離れてしまわないように、パコちゃんの心情をできるだけ理解してもらえるように描いたり、あんまり気持ち悪くなりすぎないように気を付けたいなと(笑)。そこらへんのさじ加減が難しいなと思ってます。
ただ、もっと否定的な意見が多いかなと思ってたんですけど、意外とパコちゃんに共感したり応援したりしてくれるコメントがあって、思っていたよりそんなに気持ち悪い部分が出てないのかな、と。もっと気持ち悪いところを出してもいいのかなあと悩んでいます。まだメンヘラの本領発揮してないので(笑)。
――特に思い入れのあるキャラクターは誰ですか?

「円(まどか)」
我妻:円(まどか)が好きです。所謂(いわゆる)わかりやすいメンヘラというか記号的なキャラクターとして登場させたんですけど、描いていくうちに彼女を理解できるようになってきました。
最初はあんまり描いたことない感じの子だったので、扱いづらいなと思ってたんですけど、今は可愛くて仕方ない(笑)。まだ若いからしゃーないよなーと思いつつ。強く生きていってほしいなと。実際に円くらいの年齢の人が読んでどう思うかは、ちょっとわかんないですけどね。
――逆に、苦手あるいは“まだつかめない”キャラクターはいますか?
我妻:あつしが全然思い通りに動いてくれない(笑)。最初はパコちゃんの依存体質や認知の歪(ゆが)みを正してくれるキャラクターとして考えてたんですけど、ネームやってるうちに、しっかりしてくれよって感じの展開になってしまって。情けない…ってわけでもないんですけど。あつしは普通の大学生なんで。若いし、まだああいう女性を相手にするのはしんどいだろうなって。私としてはもうちょっと、あつしからもぶつかっていって欲しいなと思ってます。